あなたは、総合ITソリューション企業「株式会社ネクストビジョン」の事業推進部 プロダクトマネジメント課の課長です。あなたは3ヶ月前に着任したばかりで、主力製品である業務効率化AIツール「Vision-AI」シリーズの次期バージョン「Vision-AI 3.0」の開発プロジェクトマネージャーを任されています。
本日は、業界最大手のカンファレンスに部長代理として終日参加しており、社内には不在です。PCでのメール対応は可能ですが、電話や対面での打ち合わせは一切できません。
これから4分間で、未処理のメール5件を処理する必要があります。以下はそのうちの1件です。
差出人: 田中 誠(営業本部 営業第一課 課長)
日時: 20XX年10月26日 13:15
宛先: あなた
CC: 鈴木 一郎(開発本部 開発第二課 課長)
件名: 【至急・要判断】新製品「Vision-AI 3.0」の仕様変更に関する緊急要請
お疲れ様です。営業第一課の田中です。
表題の件、本日午前中に最大手クライアントである株式会社グローバルトレード様と定例会を行ったのですが、次期製品「Vision-AI 3.0」に『AIチャットによる自動問い合わせ機能』の追加を強く要望されました。
先方も来期システム予算の最終決定が迫っており、この機能が搭載されるのであれば、現行の5倍となる全部署への導入を確約する、との内示を頂いています。これは当社にとって絶対に逃せない大型案件です。
早速、開発第二課の鈴木課長に相談したところ、「今からそんな大規模な仕様変更は不可能だ。スケジュールが破綻し、品質も担保できない。無責任な要求はやめてほしい」と、電話口で激怒され、取り付く島もありませんでした。
しかし、このチャンスを逃すわけにはいきません。あなたにプロジェクトマネージャーとして、開発を説得し、仕様変更を断行する判断をお願いしたく、ご連絡しました。
営業部長の山本部長にも報告済みであり、開発の佐藤部長へも話を通すとのことです。本日17時までには方針を決定し、両部長へ報告する必要があります。
不在中に申し訳ありませんが、至急のご判断をお願いいたします。
回答と解説を見る
正解:C
選択肢Cがベストです。
選択肢Cがベスト
この問題における管理職の役割は、一方の意見を鵜呑みにして安易な判断を下すことではなく、対立する両部門の間に立ち、客観的な事実に基づいて最適な着地点を見つけ出す「ファシリテーター」となることです。
- 情報収集の優先: 選択肢Cは、まず感情的な対立から一歩引き、意思決定に不可欠な「クライアントの真のニーズ」と「技術的な実現性・リスク」という客観的な情報を集めるアクションです。これは、データに基づいた合理的な判断を行うための基本であり、最も重要な初動です。
- 当事者意識の醸成: あなたが一人で結論を出すのではなく、三者会議を設定することで、営業と開発の双方に「自分たちの問題」として捉えさせ、協力して解決策を探る姿勢を促します。これは、部門間の信頼関係を再構築する上でも効果的です。
- 代替案の模索: 「やるか、やらないか」の二者択一ではなく、情報を集めた上で「リリース時期をずらす」「機能を縮小して初期リリースする(MVP開発)」「別の手段で顧客の課題を解決する」といった第三の選択肢(代替案)を議論する土台を作ることができます。
選択肢Aは開発部門の完全な無視であり、プロジェクトの破綻や部門間の深刻な亀裂を生む最悪手です。選択肢Bはビジネスチャンスを安易に放棄するものであり、会社の利益を最大化する管理職の役割を果たしているとは言えません。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高 / 緊急度:高
この案件は、時間管理マトリクスにおいて「重要かつ緊急」な領域に位置づけられます。
- 重要度(高): 会社の売上を大きく左右する可能性のある大型案件の成否、新製品の仕様という根幹部分の決定、そして営業と開発という主要部門間の信頼関係に関わる問題であり、事業へのインパクトが極めて大きいため。
- 緊急度(高): メール文中に「本日17時までに方針決定を」という明確な期限が設定されており、放置すれば関係各所が混乱し、問題がさらに悪化する可能性があるため。ただし、ここで求められる「緊急対応」とは、「最終決定」ではなく「適切な一次対応」です。まず状況をコントロールし、関係者に次のアクションプランを示すという初動を迅速に行う必要があります。
部署間の利害が衝突する場面は、管理職にとって避けては通れない試練です。アセスメントでは、以下の観点からあなたの調整能力が評価されます。
- 感情と事実を分離する
「激怒された」「無責任だ」といった感情的な言葉に引きずられず、その背景にある「なぜ品質が担保できないのか?」「なぜその機能が必須なのか?」という客観的な事実(ファクト)を冷静に収集・分析する姿勢が重要です。 - 仲裁者ではなくファシリテーターを目指す
どちらが正しいかを裁く「裁判官」になるのではなく、両者の意見を引き出し、議論を整理し、「会社の利益」という共通のゴールに向かって建設的な対話を促進する「司会者(ファシリテーター)」としての役割に徹しましょう。 - コミュニケーションの「場」を設計する
対立が激化している際は、当事者同士の直接対話を一旦止め、あなたがハブとなって情報整理を行うことが有効です。その上で、議題、参加者、時間、ゴールを明確にした会議を設定するなど、建設的な議論ができる「場」を意図的に作り出すことが求められます。 - 常に代替案(オプション)を探す
「AかBか」というゼロサムゲームに陥らず、「A’(Aの一部)を実現し、Bの懸念を解消する方法はないか」「Cという新しい選択肢はないか」と、常に複数の解決策(オプション)を模索する創造的な思考が、組織のパフォーマンスを最大化します。

