あなたは、ITソリューション企業「ネクストリーム・ソリューションズ株式会社」のマーケティング部で、最近課長に昇進した鈴木 誠です。
現在、あなたは重要な海外カンファレンスに出席するため、ヨーロッパに出張中です。現地時間の午前9時、これから1時間後には自社の新技術に関する重要なプレゼンテーションを控えており、その最終準備をしています。
手元のノートPCでメールは確認できますが、時差とプレゼン準備のため、すぐに電話をすることはできません。これから4分以内に、未処理の案件に対応する必要があります。
差出人: 山田 健一 (営業第一部長)
宛先: 鈴木 誠 (マーケティング部 課長)
CC: 佐藤 浩司 (開発部長)
日時: 20XX年10月27日 15:30 (日本時間)
件名: 【至急・重要】新製品『AI-Boost V2.0』の仕様変更に関する緊急要請
鈴木課長
お疲れ様です。営業第一部長の山田です。
海外出張中、またプレゼン前で大変恐縮ですが、緊急事態のため連絡しました。
来月リリースを予定している主力新製品『AI-Boost V2.0』について、最大の競合であるテックフロンティア社が、昨日、同種の製品を3週間前倒しで発表したとの情報が入りました。
さらに深刻なことに、彼らの製品には我々のV2.0にはない「リアルタイム多言語翻訳機能」が搭載されています。現在、我々が最重要顧客としてアプローチしているグローバル企業「ワールドコネクト社」は、まさにこの機能を決め手として、テックフロンティア社製品の導入を本格的に検討し始めた模様です。このままでは、数億円規模の大型案件を失注する可能性が極めて高い状況です。
つきましては、緊急対策として、『AI-Boost V2.0』に同等の翻訳機能を追加実装する仕様変更を強く要請します。リリースが多少遅れても構いません。この機能なくして、市場での成功はあり得ないと判断しています。
しかし、先ほど開発部の佐藤部長にこの件を打診したところ、「今からの仕様変更は品質保証の観点から絶対に不可能だ。無責任なことを言うな」と一点張りで、全く話になりません。
そこで、マーケティング部の公式な見解として、我々の要請を後押しし、佐藤部長を説得していただけないでしょうか。市場の声を一番理解している鈴木課長の意見が不可欠です。本日15時(日本時間)までには、経営層へ報告するための方針を固めたいと考えています。
ご多忙のところ恐縮ですが、至急のご判断をお願いいたします。
営業第一部長
山田 健一
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
このケースでは、部署間の対立を鎮め、組織として最適な意思決定を行うためのプロセスを設計することが管理職の最も重要な役割です。選択肢Bは、その役割を最も的確に果たしています。
- 中立性と客観性: Aは営業部、Bは開発部の代弁者になっており、対立を助長しかねません。Cはどちらか一方の肩を持つのではなく、まずは客観的な事実(ファクト)に基づいて議論すべきだという、公平かつ建設的なスタンスを示しています。
- 問題の本質を見極める姿勢: 営業部は「機能追加」、開発部は「品質維持」という手段に固執していますが、本来の目的は「事業の成功」です。Cは、その目的を達成するために、競合情報、顧客ニーズ、開発リスクといった多角的な情報を集め、本質的な課題解決を目指す姿勢を示しており、極めて評価が高い行動です。
- プロセス設計能力: 緊急の要請に対し、即座に結論を出すのではなく、「会議の設定」と「アジェンダの提示」という具体的な次のアクションプランを示しています。これにより、場当たり的な判断を避け、関係者が納得感を持って結論を出すための道筋をつけています。山田部長の「本日15時まで」という期限に対しても、「方針決定のためのプロセスを開始する」という形で応えることができており、単なる先延ばしではありません。
管理職はプレイヤーではなく、チームや組織全体が最適なパフォーマンスを発揮できるよう環境を整える「指揮者」です。Bの行動は、まさにその役割を体現したものであると言えます。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高
緊急度:高
この案件は、重要度・緊急度が共に高い「最優先で対応すべき案件」に分類されます。
- 重要度(高): 主力新製品の成否に関わる問題であり、会社の売上や市場シェアに直接的な影響を与えます。また、営業部と開発部という主要部門間の対立は、放置すれば組織全体の機能不全につながるため、組織マネジメントの観点からも極めて重要度が高いと言えます。
- 緊急度(高): 営業部長から「本日15時まで」という明確な時間的制約が設けられています。また、競合の動きが早く、判断の遅れが大型案件の失注という具体的な機会損失に直結する可能性があるため、迅速な対応が求められます。
部署間の利害が対立する場面は、管理職がその価値を最も発揮すべきシチュエーションの一つです。
このような状況に直面した際の行動原則は以下の通りです。
- 1. 伝書鳩にならない: どちらか一方の部署の言い分をそのままもう一方に伝えるだけでは、単なるメッセンジャーであり、対立を煽るだけです。管理職は、両者の意見を一度自分の中で咀嚼し、一段高い視座から解決策を探る必要があります。
- 2. 感情論から事実(ファクト)ベースの議論へ: 「絶対に無理だ」「何としてもやれ」といった感情的な対立を、「実現した場合のメリットは何か」「リスクは具体的に何か」「代替案はないか」といった、客観的な事実やデータに基づいた議論に転換させることを意識してください。そのための「場」を設定することが重要です。
- 3. 共通のゴールを再認識させる: 各部署の目先の利害は対立していても、「会社の事業を成功させる」という最終的なゴールは共有しているはずです。その共通のゴールを関係者に再認識させ、部分最適ではなく全体最適の視点で物事を考えるよう働きかけることが、管理職の重要な役割です。
アセスメント試験では、短期的な解決策に飛びつくのではなく、問題の構造を冷静に分析し、関係者を巻き込みながら解決へと導くための適切な「プロセス」を設計できるかが高く評価されます。

