あなたは、BtoB向けSaaS「Work-X」を提供する中堅IT企業「ネクストイノベーション株式会社」のシステムソリューション事業部、第一開発部の新任課長です。課長に就任してまだ1週間しか経っていません。
現在、あなたの部署では大口顧客である「グローバルトレード社」向けの重要な新機能開発プロジェクトが最終段階を迎えています。しかし、営業部と開発部の間で、リリース納期を巡って意見が対立し、緊張が高まっています。
【あなたの状況】
あなたは今から重要な社外打ち合わせのため、2時間外出しなければなりません。その前に、溜まっている未読メールをいくつか処理する必要があります。以下は、そのうちの1通です。
未読メール
差出人: 営業第一部 課長 山田 太郎 <t.yamada@next-innovation.co.jp>
日時: 20XX年10月27日 09:15
宛先: 開発第一部 課長 高橋 (あなた)
CC: システムソリューション事業部長 鈴木 一郎
件名: 【至急・要対応】グローバルトレード社向け新機能の納期遅延に関する件
高橋課長
お疲れ様です。営業部の山田です。
表題の件、昨日あなたの部のチームリーダーである佐藤さんから、「品質担保のため、テスト期間を2週間延長したい」との申し出がありましたが、到底受け入れられません。
グローバルトレード社とは、来週末のリリースを固く約束しており、先方の業務計画にも組み込まれています。これを反故にすれば、顧客の信頼を大きく損ない、今後の契約更新にも悪影響が出かねない重大な問題です。
開発部の事情は理解しますが、顧客との約束が最優先です。なんとしてでも当初の納期を死守してください。
万が一、納期が遅れるようなことがあれば、当方としては営業部長と共に、鈴木事業部長へ正式に問題提起せざるを得ません。その場合、開発部のプロジェクト管理責任を厳しく追及することになりますので、ご承知おきください。
本日中に、開発部としての明確な方針をご回答いただけますよう、強くお願いいたします。
以上、よろしくお願いいたします。
————————————
営業第一部 課長
山田 太郎
————————————
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
この状況で最も優れた判断は選択肢Bです。管理職として、短絡的な判断や一方的な要求の受け入れを避け、問題の全体像を把握し、関係者と協調して解決策を模索する姿勢が求められます。
- 情報収集と事実確認の徹底: メールだけの情報で判断するのは危険です。営業部の言う「固い約束」のレベル感や、開発部が懸念する「品質問題」の具体的なリスクなど、双方から直接ヒアリングし、客観的な事実を把握することが不可欠です。Bの行動は、この初動を適切に行おうとしています。
- 当事者意識と建設的な姿勢: AやCのように、どちらかの部署に責任を押し付けるのではなく、まずは自分がハブとなって対話の場を設けようとする姿勢が重要です。また、開発チームに代替案を検討させることで、単なる「できない」という回答ではなく、「どうすればできるか」という建設的な議論に繋げようとしています。
- 全体最適の視点: Aは顧客満足(短期的)と引き換えに品質と従業員満足を犠牲にし、Bは品質と引き換えに顧客満足と部署間関係を犠牲にしています。これらは「部分最適」な判断です。Bは、営業(顧客)、開発(品質)、会社(長期的な利益)の三方にとっての「全体最適」な着地点を探るためのプロセスを開始しており、マネージャーとして最も望ましい行動です。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高 / 緊急度:高
この案件は、インバスケットで対応すべき案件の中でも、最優先で取り組むべき「重要度:高、緊急度:高」に位置づけられます。
- 重要度の観点(なぜ高いか):
- 事業への影響: 大口顧客の信頼に関わる問題であり、失注や契約解除に繋がれば事業へのインパクトが大きい。
- 組織への影響: 営業部と開発部という、事業の根幹をなす部署間の対立であり、放置すれば組織全体のパフォーマンス低下を招く。
- 品質への影響: 無理な納期で進めれば、製品の品質が低下し、将来的にさらなるクレームや信頼失墜に繋がるリスクがある。
- 緊急度の観点(なぜ高いか):
- 期限の設定: 差出人から「本日中に回答を」という明確な期限が設定されている。
- 上位者の関与: 事業部長がCCに入っており、問題がすでに上位層に認識されている。対応が遅れれば、あなたの管理能力が問われる事態に発展する。
- 対立の激化: 迅速に対応しないと、部署間の感情的な対立がさらにエスカレートし、収拾がつかなくなる可能性がある。
したがって、外出前に「初動対応(選択肢Bのようなアクションプランの提示)」だけでも完了させておく必要があります。
部署間の利害対立は、どの組織でも起こりうる健全なコンフリクト(衝突)の一形態です。これを乗り越えることで、組織はより強くなります。管理職としてこの種の案件に臨む際は、以下の点を意識すると評価が高まります。
- 審判ではなく、ファシリテーターであれ: どちらが正しいかを裁く「審判」になってはいけません。双方の言い分を尊重し、冷静な対話を促進する「ファシリテーター」としての役割を意識しましょう。共通のゴール(この場合は「顧客の成功と自社の事業成長」)を再確認させることが第一歩です。
- 「Why」を深掘りする: 営業は「なぜ」納期厳守を主張するのか?(顧客の事業計画への影響など)。開発は「なぜ」延長が必要なのか?(具体的な品質リスクなど)。表面的な要求の裏にある本質的な理由(Why)を深掘りすることで、単なる妥協ではない、創造的な解決策の糸口が見つかります。
- コミュニケーションの場を公式に設定する: メールや伝聞でのやり取りは、誤解や感情的なしこりを生みやすくなります。関係者全員を集めた会議など、公式なコミュニケーションの場を設定し、事実ベースで議論することが極めて重要です。
- Win-Winの着地点を探る: どちらかが勝ち、どちらかが負けるというゼロサムゲームに陥らないように注意してください。「納期は守りつつ、最重要機能のみを先行リリースし、残りは追加で納品する」といったような、双方が納得できるWin-Winの着地点を粘り強く探す姿勢が、管理職の腕の見せ所です。

