あなたは、大手食品メーカー「アジワイフーズ株式会社」の商品企画部で新しく課長に就任したばかりです。
現在、あなたの部署が主導する新商品「スマートプロテインバー」のプロジェクトが進行中で、発売は2ヶ月後に迫っています。
しかし、最終仕様を巡って、販売を担当する営業部と、製造を担当する開発部の間で意見が対立している状況です。
あなたはこれから重要な取引先との打ち合わせで、1時間ほど外出しなければなりません。外出前に、溜まっているメールを確認し、必要な指示を出しておく必要があります。
差出人: 営業第一部 課長 鈴木 一郎
日時: 20XX年10月26日 13:05
件名: 【至急・要判断】新商品「スマートプロテインバー」の仕様変更依頼について
商品企画部
佐藤課長
お疲れ様です。営業部の鈴木です。
表題の件、先日実施したターゲット層(20代男女)への最終サンプル調査の結果、「味が薄く、甘みが足りない」との意見が想定以上に多く寄せられました。
このままでは、強力な競合商品に埋もれてしまい、初動の売上が大きく計画を割り込む危険性が高いと判断しています。
つきましては、若者受けを狙い、フレーバーにもう少し甘みを加える仕様変更を至急お願いしたく、ご連絡いたしました。
先日、開発部の高橋課長にも相談したのですが、「健康志向のコンセプトから外れる」「今からの変更は納期的に不可能だ」の一点張りで、話になりません。
しかし、我々営業としては、売れないものを売るわけにはいきません。売れてこその商品です。
明日午前中の営業会議で方針を報告する必要があるため、佐藤課長の迅速なご判断をお願いいたします。商品企画部のリーダーシップに期待しています。
以上、よろしくお願いいたします。
————————————
アジワイフーズ株式会社
営業第一部 課長 鈴木 一郎
Tel: 03-XXXX-XXXX
————————————
回答と解説を見る
正解:C
選択肢Cがベストです。
選択肢Cがベスト
このケースにおける管理職の最も重要な役割は、一方の部署の意見に偏ることなく、組織全体として最適な意思決定を導くプロセスを設計することです。
- 対立の構造化と情報共有: 選択肢AとBは、一方の意見を鵜呑みにしてもう一方に伝えるだけの「伝書鳩」的な対応であり、部署間の対立をさらに深刻化させるリスクがあります。まず関係者全員が同じ情報(営業が懸念するデータ、開発が懸念する技術的・時間的制約)を共有し、課題の全体像を正確に把握する場を設けることが不可欠です。
- ハブとしての機能: 商品企画部は、営業と開発の間に立つ「ハブ」の役割を担います。両者の主張を受け止め、感情的な対立を避けながら、「新商品を成功させる」という共通のゴールに立ち返らせ、建設的な議論をファシリテートする責任があります。Cの行動は、その第一歩として最も適切です。
- 拙速な判断の回避: 「至急」「明日まで」という言葉に焦って独断で決めると、後で取り返しのつかない事態になりかねません。外出後の1〜2時間でミーティングを設定すれば十分に「明日午前中」には間に合います。緊急度を正しく見極め、判断に必要な情報を集めるための時間を確保する姿勢が評価されます。
重要度:高 / 緊急度:低
重要度: 高
新商品の売上、ひいては会社の業績に直結する重要な案件です。また、ここで適切な対応をしないと、営業部と開発部の間に深刻な亀裂が入り、今後のプロジェクト全体に悪影響を及ぼす可能性があります。組織マネジメントの観点からも極めて重要度が高いと言えます。
緊急度: 低
メールには「至急」「明日午前中の営業会議で」と記載があり、一見すると緊急度が高そうに見えます。しかし、これは「今この瞬間にあなた一人が結論を出さなければならない」という意味ではありません。外出から戻った後に関係者を集めて議論し、明日の朝までに結論を出す時間は十分にあります。この「見せかけの緊急性」に惑わされず、冷静にプロセスを設計できるかが問われています。
管理職として部署間の利害対立に直面した際は、以下のマインドセットが重要です。
- 1. 審判ではなく、ファシリテーターであれ: あなたの役割は、どちらが正しいかを裁くことではありません。両者の意見や懸念をテーブルに乗せ、事実(データ)に基づいて議論を整理し、全員が納得できる(あるいは少なくとも理解できる)結論へと導くファシリテーターとしての役割が求められます。
- 2. 対立を「機会」と捉える: 部署間の意見の対立は、異なる視点から物事を検証できている健全な証拠でもあります。これを厄介事と捉えず、より良い成果を生み出すための「健全な衝突」と前向きに捉え、建設的な議論の場をデザインしましょう。
- 3. 「事実」と「感情・意見」を切り分ける: 「売れないと意味がない(意見)」「話にならない(感情)」といった言葉と、「モニター調査の具体的な数値(事実)」「仕様変更にかかる工数とリスク(事実)」を明確に切り分け、議論を客観的な土台の上に進めることが極めて重要です。
- 4. 共通の目的を再確認させる: 対立が激化すると、各部署は自分の主張を通すことが目的化しがちです。そんな時こそ「私たちの共通のゴールは、この新商品を成功させ、お客様に喜んでもらい、会社の利益に貢献することですよね?」と、全員が向かうべき方向を再確認させることが、課長職の重要な役割です。

