あなたは、大手食品メーカー「アジワイフーズ株式会社」の営業企画部第2課で、1ヶ月前に課長に昇進したばかりの新任管理職です。
今日は月曜日の朝。これから重要な海外コンペに参加するため、1週間のヨーロッパ出張に出発するところです。空港のラウンジで搭乗を待つ間、会社のスマートフォンでメールをチェックしています。搭乗開始まで残り時間は4分。この時間内で溜まっているメールを処理し、必要な指示を出さなければなりません。
あなたの課は、あなたが着任してからチームワークも向上し、現在の営業目標も順調に推移しています。しかし、成果を競い合う中で、時折メンバー間の些細な意見の対立が見られることもありました。
差出人: 田中 健太 <k-tanaka@ajiwaifoods.co.jp>
日時: 20XX年10月23日(月) 08:15
件名: ご相談したい件がございます
〇〇課長
おはようございます。
出張前に大変申し訳ありません。急ぎではないのですが、少し気になっていることがあり、ご相談させて頂きたくメールいたしました。
実は、同僚の鈴木さんの経費申請について、少し気になる点があります。
先月の経費精算レポートを拝見した際、鈴木さんが「取引先X社の担当者との会食」として3万円ほどの接待交際費を申請されていました。しかし先日、私がX社の担当者の方と電話でお話しした際に、雑談の中で「最近、鈴木さんとはご一緒できていますか?」と尋ねたところ、「いいえ、先月はお会いしていませんよ」とのお返事でした。
もちろん、私の勘違いや、X社の別の担当者との会食だった可能性も十分にあるとは思います。鈴木さんはエースとして課の売上に大きく貢献されている方ですし、私が疑うような立場でないことは重々承知しております。
ただ、もし万が一、事実と異なる申請だった場合、問題になるのではないかと少し不安に感じております。どのように対応すべきか分からず、まずは課長にご報告・ご相談すべきだと考えました。
お忙しいところ恐縮ですが、出張からお戻りになりましたら、一度お時間をいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
田中 健太
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
このケースでは、選択肢Bが管理職として最も適切かつバランスの取れた初期対応です。理由は以下の通りです。
- 1. 告発者の保護: まず、勇気を出して相談してきた田中さんの立場を守ることが最優先です。不用意に動くと「告げ口した」ことが本人に伝わり、田中さんが職場で孤立するリスクがあります。B案のように、自分が責任を持つことを伝え、他言無用を指示することで、相談者を保護し、安心感を与えることができます。
- 2. 事実確認の原則: 疑惑はあくまで疑惑であり、事実と確定したわけではありません。いきなり本人(鈴木さん)に問いただす(A案)のは、もし勘違いだった場合に信頼関係を著しく損なう悪手です。まずは客観的な事実(経費システムの申請内容、添付された領収書、訪問記録など)を、冷静に、誰にも知られずに確認するのが鉄則です。
- 3. 段階的な対応: 管理職の役割は、部署内で起きている問題を一次情報に基づいて把握し、適切な手順で解決に導くことです。すぐに上司や人事部を巻き込む(C案)のは、自らのマネジメント責任を放棄していると見なされかねません。まずは課長として状況を把握し、不正の可能性が高いと判断した時点で、初めて上司や関係部署に相談・報告するという段階的なアプローチが求められます。
- 4. 冷静な判断: 出張直前という限られた時間と情報の中で、拙速な判断を下すべきではありません。帰国後に腰を据えて対応する姿勢は、冷静な問題解決能力の高さを示します。
重要度:高 / 緊急度:低
この案件は「重要度:高、緊急度:低」に位置づけられます。
- 重要度:高
経費不正の疑惑は、単なる金銭的な問題だけでなく、コンプライアンス違反という組織の根幹を揺るがす重大な問題です。放置すれば、他の社員の士気低下や規律の緩みを招く可能性があります。管理職として必ず対処しなければならない重要案件です。 - 緊急度:低
疑惑の対象となっているのは「先月」の出来事であり、今この瞬間に対応しないと証拠が隠滅されたり、被害が拡大したりする可能性は極めて低いです。むしろ、空港からの限られた時間で焦って対応することの方が、関係をこじらせたり、誤った判断を下したりするリスクを高めます。出張から帰国後に、慎重かつ計画的に対応を進めるのが適切です。
管理職として部下の不正疑惑というデリケートな問題に直面した際、冷静かつ適切な対応ができるかは、その人物の器を測る重要な指標となります。アセスメント試験では、以下のマインドセットと行動原則が評価されます。
マインドセット
- 推定無罪の原則を貫く: 報告や噂を鵜呑みにせず、「疑惑は事実ではないかもしれない」という前提に立ち、客観的な証拠に基づくまでは中立の立場を維持する。
- 告発者を守る意識: 内部からの相談は、組織の自浄作用として非常に貴重です。相談者が不利益を被らないよう、その安全とプライバシーを最大限に保護する姿勢が最も重要です。
- 冷静さと論理性の維持: 驚きや怒りといった感情に流されず、「事実」と「感情」、「憶測」を切り分け、論理的な思考で対応手順を組み立てる。
加点されやすい行動原則
- 受容と保護: まずは相談があったという事実を受け止め、相談者に対して「よく話してくれた」と感謝を伝え、秘密厳守と保護を約束する。
- 一次情報の確認: 憶測で動かず、まずは自分自身の権限でアクセスできる客観的なデータ(経費システム、勤怠記録、日報など)を確認し、事実の裏付けを取る。
- 段階的なエスカレーション: 自分の手で事実確認を進め、不正の確証が高まった段階で、初めて上司や人事・コンプライアンス部門といった専門部署に正式に報告・相談する。いきなり丸投げしない。
- 記録の徹底: いつ、誰から、どのような相談を受け、自分がどのように考え、どう対応したかを手帳やメモに時系列で記録しておく。これは、後の正式な調査や報告の際に、自分の行動の正当性を証明する重要な証拠となります。

