あなたは、BtoB向けSaaSプロダクトを提供する中堅IT企業「株式会社ネクストビジョン・ソリューションズ」のマーケティング部、新任課長です。
現在、会社は全社の期待を背負う新プロダクト「AIアナリティクスPro」のローンチを2ヶ月後に控えており、あなたはそのプロジェクトの主要メンバーの一人です。
今日は月曜日。あなたは3日間の海外出張から早朝に戻り、久しぶりに出社しました。出張中に溜まった未処理案件の処理を開始したところです。
【前提条件】
- 制限時間:5分
- タスク:あなたはこれから5分で、この案件を含め10件の未処理案件に対応方針を決め、PC上のメモに記録しなければなりません。
- 制約:この5分間は、直接の電話や会議、対面での会話はできない設定です。すべての判断と指示は、文章で記録することとします。
差出人: 営業推進部 課長 山田 太郎
CC: 開発本部 第2開発部 課長 鈴木 一郎、マーケティング部 部長 佐々木 誠
日時: 20XX年10月23日(月) 09:15
件名: 【緊急・要判断】AIアナリティクスProのデモ環境リソース配分について
マーケティング部 高橋課長
お疲れ様です。営業推進部の山田です。ご出張お疲れのところ、早速で申し訳ありません。
緊急でご判断いただきたい案件があり、ご連絡いたしました。
標題の件、現在、最重要クライアントである株式会社グローバルトレード様に対し、「AIアナリティクスPro」を中核とした大型DX支援の提案を進めています。
先方から非常に高い関心をいただいており、来週早々に役員向けの特別デモンストレーションを実施したいとの強い要請がありました。
つきましては、来週の火曜から木曜までの3日間、現在、開発部の鈴木課長チームが最終テストで使用している高性能サーバー環境を、当社のデモ用に専有させていただきたく、ご協力をお願いする次第です。
この案件は、受注できれば本製品の初年度売上目標の30%を達成できる見込みの超大型案件であり、会社全体の業績に与えるインパクトは計り知れません。マーケティング部としても、このビッグチャンスの重要性はご理解いただけるものと確信しております。
しかしながら、先ほど開発の鈴木課長に相談したところ、「リリース前の最終品質保証テストに不可欠な環境であり、3日間も稼働を止められるとリリース遅延のリスクが極めて高い」との一点張りで、強く反対されてしまいました。(CCの鈴木課長からも、別途強いトーンの返信が来ています)
営業としては絶対に譲れない案件です。最終的なリソース配分の判断は、プロダクト全体の責任を持つマーケティング部に委ねられていると認識しております。本日中に、高橋課長のご判断をいただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
——————–
[RE] 差出人: 開発本部 第2開発部 課長 鈴木 一郎
日時: 20XX年10月23日(月) 09:30
高橋課長
開発の鈴木です。山田課長の要求はエンジニアリングの観点から見て無謀です。
あのサーバー環境は、最終ストレステストと脆弱性診断のために緻密なスケジュールが組まれています。今このタイミングで3日間も中断すれば、バグの発見と修正が遅れ、最悪の場合、予定通りのリリースは不可能です。
営業の都合で開発スケジュールを混乱させ、製品の品質を危険に晒すことは絶対に認められません。
マーケティングの立場からも、製品の品質担保と納期遵守の重要性を山田課長に説いていただけるよう、強くお願いいたします。
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
管理職としての役割は、二者択一でどちらかの肩を持つことではなく、対立する両者の利害を調整し、組織全体の目標(この場合は新製品の成功)を達成するための最適解を導き出すことです。
- Aの選択肢の問題点: 短期的な売上を優先するあまり、製品の品質低下やリリース遅延という致命的なリスクを軽視しています。開発部のモチベーションを著しく下げ、将来的な部署間関係に深刻な亀裂を生む可能性があります。
- Cの選択肢の問題点: 品質と納期を重視するのは正しいですが、会社の売上の柱となりうる千載一遇のビジネスチャンスを安易に放棄することになりかねません。営業部の士気を下げ、「開発は協力的でない」というレッテルを貼られるリスクがあります。
- Bの選択肢が優れている理由:
まず対立する両者を一方的に断罪せず、対話のテーブルに着かせるというアプローチが極めて重要です。感情的な対立を一旦クールダウンさせ、客観的な事実(ファクト)に基づいた議論を促すことができます。
「代替案の模索」という前向きな姿勢を示すことで、単なる仲介者ではなく、主体的に問題を解決しようとするリーダーシップを発揮しています。「デモの必須要件は何か?」「本当に3日間『専有』する必要があるのか?」といった論点を整理することで、両者が納得できる現実的な落としどころ(例:夜間のみサーバーを利用する、機能限定の簡易デモ環境を急遽構築する等)が見つかる可能性が高まります。
これは、部分最適(営業or開発)の判断から、全体最適の視点へ移行させるための、最も建設的でマネジメントとして適切な初動です。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高
この案件は、会社の経営に直結する二つの重要事項が正面から衝突しています。
- 会社の将来を左右する新製品のリリーススケジュールと品質
- 初年度売上目標の3割を占める可能性のある超大型案件の受注機会
どちらも失敗が許されない極めて重要なテーマであり、あなたの判断が会社の業績に重大な影響を与えるため、重要度は「高」と判断されます。
緊急度:高
営業課長から「本日中の判断」を求められており、来週にはクライアントへのデモが予定されています。対応が遅れれば、デモの準備が間に合わずビジネスチャンスを失うか、あるいは開発スケジュールへの影響がさらに深刻化する可能性があります。迅速な意思決定と行動が求められるため、緊急度は「高」です。
部署間の対立や利害調整は、管理職が直面する最も困難かつ重要なタスクの一つです。この種の課題に直面した際、以下のマインドセットと行動原則が評価のポイントとなります。
マインドセット
- 全体最適の追求: 自分の部署や特定の部署の利益(部分最適)ではなく、常に「会社全体にとって最善の策は何か?」という視点を持つことが不可欠です。
- ゼロサムからの脱却: 「営業が勝てば開発が負ける」といったゼロサムゲームで物事を捉えず、両者が納得し、かつ会社の利益になる第三の道(Win-Winまたはそれに近い解決策)が存在する可能性を信じ、粘り強く探す姿勢が求められます。
- 「人」と「問題」の分離: 対立を個人間の感情的な争いに発展させず、「山田課長 vs 鈴木課長」ではなく、「大型商談の機会」と「製品開発スケジュール」という二つの重要な『課題』をどう両立させるか、という問題そのものに焦点を当てて解決を図ります。
アセスメントで加点される行動原則
- 1. 事実確認の徹底: 対立する双方の主張を鵜呑みにせず、まず客観的な事実(ファスト)を収集・確認します。「本当にサーバーを3日間『専有』する必要があるのか?」「リリース遅延のリスクは具体的に何日程度か?」などをヒアリングし、議論の前提を揃えます。
- 2. 対話の場の設定: メールやチャットの応酬は、感情的な対立を悪化させがちです。関係者を集めて直接対話する場を設けることで、相互理解を促進し、建設的な議論に導きます。(本設問では制限により実行できませんが、方針として示すことが重要です)
- 3. 代替案の検討と提示: 一方の要求を断るだけでなく、「どうすれば実現できるか」という視点で、複数の代替案(例:デモ用簡易環境の構築、サーバーの夜間バッチ利用、クライアントへの日程再調整の打診など)を主体的に検討・提示する能力は高く評価されます。
- 4. 報告・連絡・相談(報連相): 自身の権限を超える、あるいは経営判断が必要だと考えられる場合は、問題を抱え込まずに速やかに上位者(部長など)に状況を報告し、指示を仰ぐことも管理職の重要な責務です。

