あなたは、IT企業「ネクストビジョン・ソリューションズ株式会社」のシステム開発第二部の課長に本日付で着任したばかりです。
前任者は急な体調不良で長期療養に入り、十分な引き継ぎは受けられていません。直属の上司である佐藤部長は、本日終日、重要なクライアントとの交渉のため外出しており、電話での連絡はつきにくい状況です。
あなたは、これから1時間以内に溜まっている未処理案件を5件処理し、その対応方針をまとめて佐藤部長にメールで報告しなければなりません。これはそのうちの1件です。
差出人: 田中 優子 <y.tanaka@nextvision.co.jp>
日時: 20XX年10月27日 09:15
件名: 【ご相談】鈴木さんの経費申請について
山田課長
本日より着任とのこと、おめでとうございます。これからどうぞよろしくお願いいたします。
早速で大変恐縮なのですが、1点ご相談したいことがございます。
先月の経費精算をチェックしておりましたところ、チームの鈴木誠さんの出張経費申請について、少し気になる点を見つけました。
具体的には、領収書が添付されていない深夜タクシー代の申請が3回(合計9,000円)ありました。当社の経費精算規定では、タクシー利用は原則として領収書の提出が必須と定められています。
本人に軽く確認したところ、「プロジェクトの納期が厳しく、終電を逃してしまった。急いでいたので領収書をもらい忘れた。プロジェクトのためなので理解してほしい」とのことでした。
鈴木さんは若手のエースとしてチームを牽引してくれており、彼の頑張りには感謝しています。しかし、規定は規定であり、今回を例外として認めてしまうと、他のメンバーに示す示しがつかないのではないかと懸念しております。
前任の課長であればどう判断されたか分からず、山田課長にご判断を仰ぎたく、ご連絡いたしました。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
田中 優子
システム開発第二部
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正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
このケースでは、まず客観的な事実確認を行い、その上で組織の公式なライン(上司)に報告・相談するという、管理職としての基本動作を徹底することが最も重要です。
- 理由1: 事実確認の優先
田中さんからの報告はあくまで一方からの情報です。まずは当事者である鈴木さんから直接、冷静に話を聞き、状況を正確に把握することが不可欠です。感情的な決めつけや憶測で判断を下すのは避けるべきです。 - 理由2: 報告義務の遵守
コンプライアンスに関わる問題は、金額の大小に関わらず、速やかに上司に報告し、組織としての判断を仰ぐのが鉄則です。新任課長が独断で処理を進めると、後々問題が大きくなった際に責任問題に発展しかねません。「報告・連絡・相談」を徹底する姿勢が評価されます。 - 理由3: 他の選択肢の問題点
選択肢Cは、事実確認を怠っており、一方的で高圧的な対応と受け取られかねません。エース社員のモチベーションを著しく低下させ、チーム内に不協和音を生むリスクがあります。
選択肢Aは、報告を怠っている点が最大の問題です。問題を部内で解決しようとする姿勢は、隠蔽体質と見なされる危険性があります。また、いきなり三者面談を行うと、鈴木さんを問い詰めるような形になり、冷静な対話を阻害する可能性があります。
したがって、①事実確認 → ②上司への報告・相談 という冷静かつ着実なプロセスを踏む選択肢Bが、最もリスク管理と組織原則に沿った行動と言えます。
重要度:高 / 緊急度:低
重要度: 高 / 緊急度: 低
この案件は、重要度と緊急度のマトリクスで上記のように位置づけられます。
- 重要度(高)
コンプライアンス違反の疑いを含む案件であり、組織の規律や公平性に関わるため、重要度は「高」です。軽微な不正でも放置すれば、より大きな問題に発展する可能性があります。部下の労務管理や規範意識の醸成という、管理職の根幹的な役割に関わる問題です。 - 緊急度(低)
この経費申請は先月の事案であり、今この瞬間に対応しないと誰かに直接的な被害が及ぶわけではありません。焦って誤った判断を下すよりも、数時間から1日程度の時間をかけてでも、関係者へのヒアリングや上司との連携など、慎重かつ適切な手順を踏むべきです。したがって、緊急度は「低」と判断します。
管理職としてコンプライアンス関連の案件に直面した際は、以下の3つの原則を徹底することが極めて重要です。
- 事実確認を最優先する
伝聞や憶測で判断せず、まずは当事者から客観的な事実を冷静にヒアリングしましょう。この際、相手を問い詰めるのではなく、「困っていることはないか」「なぜそうなったのか」という姿勢で背景を理解しようと努めることが、信頼関係を維持する上で重要です。 - 決して独断で処理しない
「これくらいのことであれば…」「自分がうまく収めよう」といった安易な判断は、問題をかえって複雑化させるリスクがあります。コンプライアンス違反の疑いがある場合は、必ず上司やコンプライアンス部門といった正規のルートに報告・相談し、組織として対応する方針を明確にしましょう。 - 公平性と一貫性を保つ
「あの人はエースだから」「今回は特別に」といった例外を認めると、組織の規律は一気に崩壊します。誰に対しても公平な基準で、一貫性のある対応を心がけることが、チーム全体の信頼を勝ち得るための鍵となります。
アセスメント試験では、最終的な結論の正しさ以上に、どのような思考プロセスを経てその結論に至ったかが評価されます。特に、組織人としての基本である「報告・連絡・相談」を適切なタイミングで実行できるか否かは、管理職としての適性を判断する上で重要な評価ポイントとなります。

