あなたは、大手ITソリューション企業「株式会社ネクストビジョン・ソリューションズ」のシステム開発第二部に所属する、新任の課長です。
前任の鈴木課長が昨夜、過労で倒れ長期休職に入ったため、あなたは本日付で急遽後任として「ソリューション開発課」の課長に着任しました。鈴木課長からの引き継ぎは一切ありません。
あなたの課が担当しているのは、大手金融機関「中央みらい銀行」向けの次世代勘定系システムの基盤開発、通称『Project Phoenix』。これは会社の威信をかけた最重要プロジェクトであり、納期遅延は巨額の違約金と深刻な信用失墜に繋がります。
現在時刻は午前9時。あなたは着任早々、未読メールの処理を開始しました。なお、本日の午後3時には、この『Project Phoenix』の進捗に関する役員報告会が予定されています。
【あなたの立場】
- 役職:システム開発第二部 ソリューション開発課 課長
- 着任:本日
- 制限時間:5分
差出人: 高橋 健太 <k-takahashi@nextvision.co.jp>
日時: 20XX年10月26日 23:45
宛先: 鈴木 課長 (前任者)
CC: 佐藤 課長 (あなた)
件名: 【緊急・要対応】Project Phoenixの進捗に関する重大なご報告
鈴木課長(CC: 佐藤新課長)
お疲れ様です。リードエンジニアの高橋です。
夜分遅くに大変申し訳ございません。Project Phoenixの進捗に関して、極めて深刻な問題が複数発生しているため、ご報告いたします。
本日、鈴木課長が緊急入院されたと伺いました。大変心配しております。急遽、後任の佐藤課長にもCCに入れさせていただきました。
現在、以下の問題が同時に発生しており、現場だけでは対応が困難な状況です。
1. コアモジュール開発の遅延と担当者の不調
本プロジェクトのエースである田中さんが、ここ2週間ほど精神的に不調な様子です。遅刻や欠勤が目立ち、明らかに集中力を欠いています。彼が担当する最重要のコアモジュールの進捗は、計画から約3週間遅延しており、納品されたコードの品質も著しく低下しています。デリケートな問題のため、私からは強く踏み込めておりません。
2. オフショア開発チームの品質問題
インドのオフショアチームが開発したモジュールについて、受け入れテストを実施したところ、報告にはなかった多数の致命的なバグが発見されました。彼らからの週次報告では「順調」の一点張りでしたが、実態は大きく乖離しています。この手戻りにより、後続の結合テストフェーズの開始が最低でも2週間は遅れる見込みです。
3. 顧客からのプレッシャー
クライアントである中央みらい銀行のご担当者様から、来週月曜日の定例会にて「具体的なリカバリープラン」を提示するよう、非常に強い口調で要請を受けております。
現状のままでは、3ヶ月後の最終納期遵守は絶望的です。課長の判断を至急仰ぎたく、明日朝一でご相談させていただけますでしょうか。
取り急ぎご報告まで。
高橋 健太
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
この選択肢が最も優れている理由は、新任管理職として直面する複雑な問題に対し、「役割分担」「組織的対応」「ステークホルダー・マネジメント」という3つの重要な観点を押さえているからです。
- 役割分担と権限委譲: 新任課長が一人で全ての情報を集め、全ての対応を行うのは非効率かつリスクが高いです。現場を最もよく知るリードエンジニアの高橋に一次情報の整理と対策案の洗い出しを指示することで、彼の主体性を引き出しつつ、迅速な情報収集が可能になります。これは適切な権限委譲であり、チームマネジメントの基本です。
- 組織的対応: 社員のメンタルヘルスという専門性が求められるデリケートな問題に対し、独断で対応するのではなく、人事部や産業医といった専門部署を巻き込む判断は極めて適切です。これにより、個人情報保護や適切なケアへの道筋が立ち、課長としての法的・倫理的リスクも回避できます。
- ステークホルダー・マネジメント: 現場対応(高橋への指示)、社内専門部署(人事部)、上層部(役員報告)、そして顧客への対応を同時並行で進めようとする視点は、マネージャーに不可欠です。特に、問題が発覚した早い段階で顧客へ一次連絡を入れる姿勢は、信頼関係の維持において非常に重要です。
選択肢Aは現場対応に偏りすぎており、役員報告や顧客対応という管理職の重要責務が抜け落ちています。選択肢Cは報告を優先するあまり、現場の緊急事態(特に田中さんの健康問題)への対応が後手に回り、事態を悪化させるリスクを孕んでいます。
重要度:高 / 緊急度:高
この案件は「重要度:高」「緊急度:高」に分類されます。
- 重要度(高):
会社の威信をかけた最重要プロジェクトの成否に直結する案件です。納期遅延による違約金や信用失墜といった経営インパクト、エース社員のメンタルヘルスという人的資本に関する問題、そして最重要顧客との関係性など、放置すれば事業の根幹を揺るがしかねない要素を含んでいるため、重要度は「高」と判断されます。 - 緊急度(高):
本日午後に役員報告会が迫っており、来週早々には顧客へのリカバリープラン提示が求められています。また、社員のメンタル不調は放置すれば回復が困難になる可能性があり、即時の介入が必要です。複数の時間的制約と深刻な問題が同時に発生しているため、一刻も早い初動が求められ、緊急度は「高」と判断されます。
納期遅延や進捗遅れといった問題は、管理職が日常的に直面する典型的な課題です。アセスメント試験では、パニックにならずに冷静かつ構造的に問題を捉え、組織として解決する能力が評価されます。
マインドセット
- 一人で抱え込まない: あなたはスーパーマンではありません。部下、同僚、上司、専門部署(人事、法務など)といったリソースをいかに効果的に活用し、組織として問題解決にあたるかという視点を持ちましょう。
- 事実と感情を切り分ける: 焦りや不安といった感情に流されず、まずは「何が起きているのか(Fact)」を客観的に把握することに努めてください。データや具体的な事象に基づいた判断が求められます。
- 守りのマネジメントも重要: プロジェクトを推進する「攻め」の姿勢と同時に、社員の心身の健康やコンプライアンスといった「守り」の視点を持つことが、現代の管理職には不可欠です。
高評価に繋がる行動原則
- 優先順位の明確化: まず人命・健康を最優先します。今回のケースでは、田中のメンタルヘルスへの配慮を初動に含めている点が重要な加点ポイントです。その上で、事業インパクトの大きい顧客対応や役員報告の優先順位を判断します。
- 多角的な情報収集: 報告書などの「静的な情報」だけでなく、関係者へのヒアリングなど「動的な情報」もバランス良く収集する姿勢が重要です。ただし、新任で時間がない状況では、誰に何を聞くか、効率的な情報収集計画を立てる能力が問われます。
- 報連相の徹底: 自分の上司(この場合は部長クラス)への第一報、関係部署への連携、そして(必要であれば)顧客への誠実な一次報告など、関係各所へのコミュニケーションを迅速に行うことで、問題を一人で抱え込まず、組織全体で対応する姿勢を示すことができます。

