あなたは株式会社フロンティアテック システム開発第三部 第三課 課長 佐藤 啓太です。
先日、全社的な組織改編が実施され、あなたの所属するシステム開発第三部も体制が大きく変更されました。これまでの課の業務内容も一部見直され、あなたは新しいメンバー構成で課を率いることになりました。
現在の課のメンバーは以下の通りです。
- 佐藤 啓太(あなた):課長
- 山田 花子:主任(入社8年目、経験豊富で頼れる存在)
- 鈴木 健一:一般社員(入社5年目、堅実で着実に業務をこなす)
- 田中 太郎:一般社員(入社3年目、真面目だが、まだ経験が浅くルーティン業務が中心)
あなたは着任後、新しい業務分担とメンバーの育成について考慮する必要があると感じています。課としての目標達成と、各メンバーの成長を両立させることがあなたのミッションです。
始業早々、PCを立ち上げると、未読メールが1件届いていました。あなたはこれから午前中の会議に向けて出発するまでの3分間で、このメールに対応する必要があります。
差出人:システム開発第三部 部長 大山 健太 <oyama.kenta@frontiertech.co.jp>
宛先:システム開発第三部 第三課 課長 佐藤 啓太 <sato.keita@frontiertech.co.jp>
日時:20XX年4月15日(月) 08:30
件名:【重要】新体制における業務分担と人材育成について(大山部長より)
佐藤課長、
おはようございます、大山です。新体制での始動、お疲れ様です。
課の運営状況について、何か困っていることはありませんか?何かあれば遠慮なく相談してください。
さて、早速ですが、一点あなたに相談したいことがあります。先日行われた新体制への移行に伴い、第三課の業務範囲が拡大し、特に顧客提案活動におけるアウトプットの質向上が求められています。
課のメンバーについてですが、田中太郎君の件です。彼は真面目で着実なタイプですが、これまで比較的定型的な業務が多かったと認識しています。新体制では、彼にもう一歩踏み込んだ業務を経験させ、成長の機会を与えたいと考えています。
具体的には、来月に予定されている「主力顧客向け新機能プレゼン資料作成」のタスクです。これは本来、主任クラスが担当することが多い重要案件ですが、これを田中君にデリゲートしてみてはどうでしょうか?
もちろん、彼にとってはチャレンジングな業務になるでしょう。しかし、ここで責任ある仕事を任せることで、彼のスキルアップとモチベーション向上につながると期待しています。課長として、彼をどのようにリードし、このタスクを成功させるか、あなたの手腕に期待しています。
来週頭にこの件について一度話しましょう。
よろしくお願いします。
大山
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
この選択肢は、単に業務を割り振るだけでなく、デリゲーション(権限委譲)と部下育成の観点から最も適切な行動です。
評価ポイント
- 目的と背景の共有: 単なる作業指示ではなく、なぜこの業務を彼に任せるのか、その目的と重要性を伝えることで、田中氏のモチベーションを高め、主体的な取り組みを促します。
- 情報とリソースの提供: 過去資料や参考情報の提示は、業務の遂行に必要なインプットを与え、田中氏がスムーズに作業を開始できるようサポートします。これは丸投げではなく、適切な準備です。
- サポート体制の明確化: 「困ったらいつでも相談するよう伝え、定期的な進捗確認の時間を設ける」という点は、田中氏が安心して業務に取り組める環境を提供します。これにより、もし問題が発生しても早期に発見し、軌道修正できる可能性が高まります。
- 成長機会の提供: 難易度の高い業務を任せつつ、適切なサポートを行うことで、田中氏のスキルアップと自信の醸成に繋がります。これは、部長の期待にも応える行動です。
その他の選択肢の課題
- 選択肢A: 「田中氏にはまだ荷が重いと判断し、自分が担当するか、山田主任に依頼する」
この選択肢は、課長の負担を増やすか、特定のメンバーに業務が集中するリスクがあります。また、田中氏の成長機会を奪ってしまい、部長の意向にも反します。短期的な効率は得られても、中長期的な組織の強化には繋がりません。 - 選択肢C: 「すぐに担当に任命し、締め切りと基本的な方向性を伝えて作業開始を指示する」
これは「丸投げ」に近いデリゲーションです。田中氏の経験が浅い現状を考慮せず、十分な情報やサポートなく業務を押し付ける形になりかねません。業務の品質低下や、田中氏のモチベーション低下、さらには失敗による自信喪失に繋がりかねません。
管理職としては、目の前のタスク処理だけでなく、メンバーの育成と組織全体の能力向上を見据えたデリゲーションが求められます。特に新任課長であれば、適切なデリゲーションを通じて、自身の役割をシフトし、より戦略的な業務に時間を使う習慣を身につけることが重要です。
重要度:高 / 緊急度:低
この案件の重要度・緊急度マトリクス
重要度:高
緊急度:低
なぜこのマトリクスか?
- 重要度が高い理由:
- 人材育成: 若手社員である田中氏の成長機会であり、将来的なチームの戦力強化に直結します。
- 組織目標への貢献: 顧客向けプレゼン資料作成は、第三課の業務範囲拡大と顧客提案活動の質向上という組織目標達成に不可欠です。
- 上司(部長)からの期待: 部長が直接言及していることから、課長としてのマネジメント能力を評価される機会でもあります。
- 緊急度が低い理由:
- メールには「来月予定されている」「来週頭にこの件について一度話しましょう」とあり、具体的な期日がすぐそこにあるわけではありません。今日中に資料を提出しなければならないといった差し迫った状況ではありません。
- 対応を急ぎすぎるあまり、適切なプロセスを踏まずに「丸投げ」状態にしてしまうと、かえって問題が生じる可能性があります。
管理職としての対応原則
この案件は、「緊急ではないが重要なタスク」の典型です。アセスメント試験では、このようなタスクを適切に認識し、目先の業務に流されず、計画的に取り組む姿勢が評価されます。重要な案件であるからこそ、焦らず、部下の状況を考慮した上で、最も効果的なデリゲーションを計画し実行することが求められます。
組織改編や人員配置の局面で管理職として評価されるためには、単に業務をこなすだけでなく、「いかに部下を育成し、チーム全体のパフォーマンスを最大化するか」という視点が不可欠です。
アセスメントで加点される行動原則
- 育成視点でのデリゲーション:
目の前のタスク処理だけでなく、「この業務を通じて部下に何を学ばせたいか」「どのように成長を促すか」という育成目標を持って業務を委譲しましょう。難易度の高い業務でも、適切なサポートがあれば、それは部下にとって大きな成長機会となります。 - 「丸投げ」ではない「権限委譲」:
業務を任せる際、ただ指示を出すのではなく、目的、背景、期待する成果を明確に伝え、必要な情報やリソースを提供することが重要です。また、進捗確認の機会や質問しやすい環境を整え、困った時に助け舟を出せる体制を明確にしておくことで、部下は安心して業務に取り組めます。 - 計画性と優先順位付け:
今回のような「緊急度は低いが重要度が高い」案件に対して、いかに計画的に、そして人材育成という長期的な視点を持って対応できるかが評価されます。目先の緊急業務に振り回されず、重要なタスクに時間を割く姿勢を示しましょう。 - コミュニケーション能力:
部下へのデリゲーションは、明確かつ丁寧なコミュニケーションが成功の鍵を握ります。部下の能力レベルを正確に把握し、彼らが理解しやすい言葉で指示を出し、彼らの不安を取り除くような声がけができるかどうかが問われます。
インバスケット試験では、このような案件を通じて、あなたの「未来の組織を創る」視点と「部下を活かす」マネジメント力が試されています。目の前のメールにどう反応するかだけでなく、その一歩先の効果まで見通せるかが、管理職としてのあなたの器を示すことになります。

