あなたは株式会社ネオソリューションズ システム開発部 第3課 課長、山田 太郎です。
当社は中堅企業向けのITソリューションを提供しており、特に基幹システムの刷新プロジェクトでは業界で高い評価を得ています。
現在、あなたとあなたの課が中心となって進めているのが、当社の基幹事業である受発注管理システム「Project Delta」の刷新プロジェクトです。これは来月末に大規模な中間テストを控え、年末の最終リリースに向けてまさに佳境を迎えています。このプロジェクトは会社の今後を左右する最重要案件であり、遅延は許されません。
あなたの課は現在、この「Project Delta」に加えて、別の大手顧客向けクラウド移行プロジェクト「Project Nimbus」も並行して担当しており、人員は常にぎりぎりの状態です。
今朝、出社しPCを立ち上げたところ、未読メールが多数届いています。始業前の残り5分で、これらのメールを処理し、最適な対応方針を決定する必要があります。
あなたの部下である藤原 健太は、入社5年目の若手ながら「Project Delta」のデータベース設計および重要モジュールの開発を一手に引き受けるキーパーソンです。彼の卓越した技術力と責任感は、課内でも群を抜いています。
※あなたは現在、手元のPCから情報収集や関係者への連絡を行うことしかできません。
差出人: 藤原 健太 <k.fujiwara@neosol.co.jp>
日時: 20XX/07/22 08:05
件名: 退職のご相談(重要)
山田課長
おはようございます。藤原です。
大変恐縮なのですが、この度、一身上の都合により、来月末(8月31日)をもって退職させていただきたいと考えております。突然のご連絡となり、申し訳ございません。
家族の事情と、かねてより検討していた地方での新規事業への参画を決意いたしました。熟考を重ねた上での決断であり、大変心苦しいのですが、意思は固まっております。
現在担当している「Project Delta」が非常に重要な局面であることは重々承知しており、課長やチームの皆様には多大なるご迷惑をおかけすることになり、本当に申し訳なく思っております。
引継ぎについては、残された期間で可能な限り誠心誠意努めさせていただきます。具体的なスケジュールなど、改めてご相談させていただければ幸いです。
お忙しいところ恐縮ですが、一度お時間をいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
藤原 健太
- 差出人: 佐藤 浩一(システム開発部長) <k.sato@neosol.co.jp>
- 日時: 20XX/07/22 08:15
- 件名: 【要確認】Project Delta進捗について
山田課長
おはようございます。佐藤です。
Project Deltaの中間テストまで残り1ヶ月となりました。先日報告のあった〇〇モジュールの結合部分に若干の懸念があるとのことで、念のため進捗状況を再度確認させてください。
特に、藤原くんが担当しているデータベース周りは非常に重要です。彼の作業が遅れると、全体に波及する可能性があります。問題があれば、すぐに私にも連携してください。
万全の体制で中間テストを迎えられるよう、引き続き指揮をお願いします。
佐藤
- 差出人: 人事部 人事担当 <hr@neosol.co.jp>
- 日時: 20XX/07/22 08:20
- 件名: 【重要】今月退職予定者向け説明会のご案内
各部署管理職の皆様
いつもお世話になっております。人事部です。
来月以降に退職予定の社員を対象とした、退職手続きに関する説明会を以下の日程で開催いたします。
- 日時:8月10日(水)14:00〜15:00
- 場所:本社会議室C
対象となる社員がいらっしゃる場合は、各自ご案内と参加促進をお願いいたします。
なお、退職の意思表示を受けた際には、速やかに人事部へもご一報ください。
よろしくお願いいたします。
人事部
A. 藤原氏にすぐに電話し、面談を設定して退職理由の詳細を聞き出すとともに、会社として引き止められる要素がないか、彼の希望を徹底的にヒアリングする。特に、待遇や担当プロジェクトの変更などで翻意を促せる可能性を探る。
B. まずは藤原氏のメールに対し、面談の時間を設定する旨を返信し、冷静に対応する。その上で、直ちに部長の佐藤氏と人事部に状況を簡潔に報告し、今後の対応方針について相談の機会を設ける。並行して、Project Deltaの現状における藤原氏の担当領域と、彼が抜けた場合のプロジェクトへの影響範囲を緊急で分析する。
C. 藤原氏の退職は確定的なものと捉え、Project Deltaへの影響を最小限に抑えるため、直ちにプロジェクトマネージャー補佐の鈴木氏と他のメンバーに、藤原氏の担当業務の洗い出しと引継ぎ計画の策定を指示する。また、部長の佐藤氏には「藤原氏の退職によりプロジェクト遅延の可能性あり」とだけ報告する。
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベストな対応です。
この状況下での管理職には、冷静な状況把握、迅速かつ適切な情報共有、そして多角的なリスクマネジメントが求められます。
- 冷静な対応と情報収集: 突然の退職申し出は感情的な反応を引き起こしがちですが、まずは冷静に面談の機会を設定し、事実を正確に把握することが重要です。選択肢Bでは、まず面談を設定する旨を返信し、藤原氏の意思を尊重する姿勢を示しつつ、詳細を聞き出す準備をします。
- 迅速な情報共有と関係者連携: 部下の退職は個人の問題にとどまらず、組織全体に影響を及ぼす重大事案です。特にキーパーソンの退職となれば、上司(部長)への速やかな報告は必須であり、人事部との連携も早期に行う必要があります。選択肢Bは、部長と人事部の双方に報告し、今後の対応方針を相談するプロセスを含んでおり、組織としての適切な対応を促します。
- リスクの事前評価と分析: 退職申し出があった場合、その影響を最小限に抑えるための行動が求められます。特に「Project Delta」が重要局面であることを踏まえ、藤原氏が抜けた場合の具体的な影響範囲を緊急で分析することは、今後の戦略を立てる上で不可欠です。選択肢Bは、この分析プロセスを含んでおり、感情的な判断に走らず、データに基づいた意思決定を支援します。
他の選択肢の問題点:
- 選択肢Aの問題点: 即座の引き止め交渉は、藤原氏の意思が固い場合、かえって不信感を与え、心証を悪くする可能性があります。また、彼の希望だけをヒアリングするだけでは、組織全体のリスクを考慮した対応には繋がりません。上司や人事への情報共有を怠るのは、危機管理として不適切です。
- 選択肢Cの問題点: 藤原氏の退職が確定と決めつけ、彼との対話の機会を十分に持たないのは、心理的安全性やエンゲージメントの観点から問題があります。また、上司への報告を「プロジェクト遅延の可能性あり」という曖昧な表現に留めるのは、情報共有の不足であり、上司が迅速かつ適切な意思決定を行うのを妨げます。引継ぎ計画の策定は重要ですが、それは関係者との連携・合意の上で進めるべきです。
管理職としては、目の前の課題だけでなく、その背景にある組織課題や将来のリスクも視野に入れ、関係者との連携を密にしながら、客観的かつ論理的に対応を進めることが求められます。
重要度:高 / 緊急度:高
この案件の「重要度」と「緊急度」は、ともに「高」と判断されます。
- 重要度:高
- 藤原氏は、会社の最重要プロジェクトである「Project Delta」の基幹部分を担当するキーパーソンであり、彼の退職はプロジェクトの遅延、品質低下、ひいては会社の信用失墜に直結する可能性が高いです。
- 技術力が高く、代替が難しい人材であるため、組織運営上の大きな損失となります。
- 他の社員への影響(モチベーション低下、業務負荷増大など)も懸念され、組織全体のパフォーマンスに影響を与えます。
- 緊急度:高
- 退職希望日が約1ヶ月後と迫っており、引継ぎ期間が限られています。
- 「Project Delta」は中間テストを控える佳境に入っており、人材の交代や業務の再配分には迅速な対応が求められます。
- 退職の意思表示を受けた際には、人事部への速やかな報告が規定で求められている可能性もあり、事務手続きの緊急性もあります。
- 上司である部長からも進捗確認のメールが届いており、状況を放置することはできません。
重要度と緊急度が高い案件は、最優先で対応すべき事項であり、迅速かつ周到な計画立案と実行が求められます。
突然の退職申し出は、管理職にとって非常にストレスフルな状況ですが、ここで試されるのはまさにあなたのマネジメント能力です。
- まずは冷静に、そして傾聴の姿勢で:
- 感情的にならず、部下の意思を尊重する姿勢を見せることが重要です。まずは感謝を伝え、なぜ退職を決意したのかをじっくりと傾聴し、背景を理解するよう努めましょう。感情的な引き止めは逆効果になることが多いです。
- ただし、この「傾聴」は、退職の意思を翻させるためのものではなく、あくまで「部下個人が抱える背景への理解」と「今後の会社としての最適な対応を考えるための情報収集」を目的とします。
- 迅速かつ正確な情報共有と関係者連携:
- 部下の退職は、その個人だけでなく、チーム、プロジェクト、ひいては会社全体に影響を及ぼします。直属の上司、人事部には速やかに報告し、情報共有と連携体制を構築しましょう。単なる報告ではなく、「今後の対応について相談する」という姿勢が重要です。
- この段階で、関係部署への影響範囲を共有し、潜在的なリスクを事前に察知・共有することが、組織としての迅速な対応を可能にします。
- 影響分析とリスクヘッジ:
- 退職する部下の担当業務、専門性、プロジェクトへの貢献度を正確に把握し、彼が抜けた場合の「穴」がどこに、どれくらいの大きさで生じるかを具体的に分析します。
- 代替案(業務の再配分、新規採用、アウトソースなど)を複数検討し、それぞれのメリット・デメリット、実現可能性を評価しましょう。特にキーパーソンの場合、単純な代替は難しく、中長期的な視点も必要です。
- 心理的安全性への配慮:
- 退職者が安心して引継ぎできる環境を整え、残されたメンバーの不安を軽減することも重要です。退職する部下には感謝の気持ちを伝え、円満退職できるよう配慮しましょう。
- 残されたチームメンバーに対しては、業務負荷が増大しないような配慮や、今後のプロジェクト遂行に関する説明を丁寧に行い、不安を払拭し、モチベーション維持に努めることが求められます。
アセスメント試験では、このような複合的な要素を冷静に分析し、「個人の尊重」「組織への影響」「情報共有」「リスクマネジメント」といった多角的な視点から、最も合理的で建設的な行動を選択できるかが評価されます。

