あなたは、大手食品メーカー「ハピネスフーズ株式会社」のマーケティング部 新商品企画課の課長に就任したばかりの高橋 健太です。
現在、会社は健康志向の新ブランド「ウェルネス・デリ」の立ち上げに全社を挙げて注力しており、あなたの課はその中核を担う新商品の企画・開発進行管理を任されています。
しかし、第一弾商品となる「プロテイン・スムージー」の仕様を巡り、技術志向の開発部と価格志向の営業部の間で意見が対立し、プロジェクトが停滞しかけています。
本日は金曜日。あなたは朝から終日、社外で開催される業界カンファレンスに出席しており、緊急時を除いてPCを開いたり電話に出たりすることはできません。移動の合間にスマートフォンでメールをチェックしたところ、以下のメールが届いていました。
【制限時間】
あなたはこれから次のセッションが始まるまでの3分間で、このメールに対するアクションを決定し、指示を出す必要があります。
差出人: 開発部 第2開発室 室長 鈴木 一郎
宛先: マーケティング部 新商品企画課 課長 高橋 健太 様
CC: 営業本部 第1営業部 部長 山本 剛 様; マーケティング本部長
日時: 20XX年10月27日(金) 10:15
件名: 【至急・要調整】新商品「プロテイン・スムージー」の仕様について
高橋課長
いつもお世話になっております。開発部の鈴木です。
表題の件、緊急でご相談がありご連絡いたしました。
現在開発中の「プロテイン・スムージー」について、営業部の山本部長から「販売価格を競合製品より1割安く設定したい。そのために、主要原料であるプロテインのグレードを1ランク下げてコストを圧縮してほしい」という強い要請がありました。
我々開発部としては、新ブランド「ウェルネス・デリ」の『本物志向の健康価値を提供する』というブランドコンセプトを根幹から揺るがすものであり、到底受け入れられません。原料の品質は、味と効果の生命線です。
このままでは、来週水曜に予定されている役員向けの進捗報告会までに、仕様を確定させることができません。開発スケジュールにも遅延が生じ、プロジェクト全体に影響が出かねない状況です。
つきましては、プロジェクトの責任者であるマーケティング部の公式見解として、本日中に方針をご提示いただけますでしょうか。
CCに関係者も入れております。よろしくお願いいたします。
回答と解説を見る
正解:A
選択肢Aがベストです。
【解説】
この問題は、部署間の対立に対して、管理職としてどのように仲介し、建設的な解決に導くかが問われています。
- 選択肢Cは、意思決定が早い点は評価できますが、営業部の意見を一方的に退けており、対立をさらに深める危険性があります。営業の協力なくして商品の成功はありません。なぜ価格を下げたいのか、その背景にある市場の情報を無視するのは得策ではありません。
- 選択肢Bは、問題を先送りしているだけで、何の解決にもなっていません。役員報告会までに仕様を確定できないという緊急性も無視しており、リーダーシップの欠如と判断されます。関係者の不満と不信感を増大させるだけの対応です。
- 選択肢Aは、感情的な対立を、客観的なデータと代替案に基づく建設的な議論へと転換させようとするアプローチであり、最も優れています。開発部には「品質」という制約の中で「コスト削減」の努力を、営業部には「価格」という主張の裏付けとなる「データ」を要求することで、両部署に当事者意識を持たせ、共通の目的(=新商品の成功)に向けた協力を促しています。これは、部門のハブとなるマーケティング担当マネージャーとして理想的な動きです。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高
緊急度:高
【解説】
- 重要度(高): 新ブランドの成否を占う第一弾商品の根幹(ブランドコンセプト、品質、価格)に関わる意思決定だからです。ここでの判断は、今後の売上や利益だけでなく、ブランドイメージや部署間の関係性にも長期的な影響を及ぼすため、重要度は非常に高いと言えます。
- 緊急度(高): メール本文に「来週水曜の役員報告会までに仕様を確定させる必要がある」「このままでは開発スケジュールに遅延が生じる」と明記されているためです。本日中に何らかの方向性を示さなければ、プロジェクトが停滞し、関係部署の混乱を招くことは明らかであり、即時の一次対応が求められます。
管理職になると、各部署の利害が衝突する場面に必ず直面します。この種の課題に対処する際のマインドセットと行動原則は以下の通りです。
【マインドセット】
部署間の対立は、それぞれの部署が自部門のミッションを真剣に遂行している証拠と捉えましょう。どちらか一方を「悪」と決めつけるのではなく、あなたは両者の意見を尊重し、会社全体の利益を最大化する「最適解」を共に見つけ出すファシリテーター(調整役)であるべきです。白黒つける「裁判官」になってはいけません。
【アセスメントで評価される行動原則】
- 1. まずは事実(ファクト)を集める:
感情的な意見の応酬に巻き込まれず、「なぜそう主張するのか?」という背景にあるデータや事実関係を客観的に把握しようとする姿勢が重要です。今回の選択肢Aのように、双方に具体的な情報の提出を求めるのは定石です。 - 2. 共通の目的を再確認させる:
「開発の想いも、営業の考えも、全ては『新商品を成功させる』という同じ目的のためですよね」と、対立点ではなく共通のゴールに焦点を当てさせることが有効です。これにより、対立構造から協調構造へと場の空気を転換させることができます。 - 3. 安易な二者択一に逃げない:
「AかBか」ではなく、「AとBを両立させる第三の道はないか?」と考えるのが管理職の仕事です。代替案や折衷案を引き出すための情報収集や働きかけが高く評価されます。 - 4. 迅速な一次対応と次のアクションの明示:
たとえその場で最終結論が出せなくても、「放置」は最悪の選択です。まずはメールを受け取ったことを示し、次に何をするか(情報を集める、会議を設定する等)を明確に伝えることで、関係者に安心感を与え、事態の悪化を防ぎます。

