あなたは、総合電機メーカー「株式会社フロンティア・イノベーションズ」の事業統括本部 第2開発部長です。
現在時刻は、金曜日の17:00。あなたは、本日18:00から重要なクライアントとの会食が設定されており、オフィスに戻るのは深夜になる予定です。残された時間は5分。この間に溜まったメールを処理し、必要な指示を出して退社しなければなりません。
あなたの会社では今、全社の期待を背負うAI関連の新事業「プロジェクト・ゼニス」が進行中です。そして、その事業化を最終承認するための役員会が、来週月曜日の午前10:00に予定されています。このプロジェクトを牽引しているのは、社長からの信頼も厚いスター社員、第1開発部長の高橋氏です。
そんな状況の中、あなたのPCに1通の緊急メールが届きました。
差出人: 鈴木 一郎 (第1開発部 研究員)
日時: 本日 16:55
件名: 【緊急・極秘】プロジェクト・ゼニスに関する重大なご相談
第2開発部長 〇〇様
突然のメール、大変失礼いたします。
第1開発部に所属しております、研究員の鈴木一郎と申します。
本来であれば、所属部署のラインで相談すべき事案であることは承知しておりますが、誰に相談すべきか悩み抜いた末、社内で最も公正な判断をされると評判の〇〇部長にご連絡いたしました。
本日は、月曜日に役員会で承認予定の「プロジェクト・ゼニス」の中核技術に関して、極めて重大な懸念があり、ご相談させていただきたく存じます。
結論から申し上げますと、当プロジェクトで採用されている画像認識アルゴリズムの基幹部分に、当社の技術提携先である「AI Dynamics社」が保有する未公開の特許技術が、正式な許諾プロセスを経ずに流用されている強い疑いがあります。
責任者である高橋部長は、チームに対して「AI Dynamics社との共同研究の範囲内であり、先方の担当者レベルでは使用の黙示的許諾を得ている」と説明しています。
しかし、私が開発初期の技術選定委員会の議事録を偶然確認したところ、高橋部長が「先方の技術を参考にすれば、開発期間を1年短縮できる。ライセンス問題は後からクリアすればいい」と発言している記録を見つけてしまいました。
この件について、先日勇気を出して高橋部長に直接確認したところ、「君は余計な心配をしなくていい。プロジェクトを成功させることが我々の使命だ。この件を外部に漏らせば、君のキャリアに傷がつくことになる」と、強い口調で事実上の口止めをされました。以来、チーム内で私は孤立し、精神的にもかなり追い詰められております。
確たる証拠は議事録の断片的な記述のみで、私の思い過ごしかもしれません。しかし、このままプロジェクトが承認され事業化された場合、将来的にAI Dynamics社との間で大規模な訴訟に発展し、当社の信用を根底から揺るがす事態になりかねないと危惧しております。
つきましては、大変恐縮なのですが、本日中に一度だけでも、お話をお伺いいただくことはできないでしょうか。このままでは、月曜日の役員会を迎えてしまいます。
何卒、よろしくお願い申し上げます。
————————————
株式会社フロンティア・イノベーションズ
第1開発部 研究員
鈴木 一郎
内線: 25-1123
————————————
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
本件のような重大なコンプライアンス違反の疑いにおいては、個人の判断で内密に処理しようとせず、速やかに組織の公式なルートを通じて対応することが鉄則です。管理職としての責務は、問題を一人で抱え込むことではなく、組織として適切に対応するためのプロセスを迅速に開始することにあります。
- 組織原則の遵守: 法務・コンプライアンスという専門部署と、直属の上司という公式ラインに速やかに報告・相談することは、組織の危機管理における基本動作です。これにより、判断の客観性が担保され、会社としての正式な対応が可能になります。
- リスク管理の最適化: 選択肢Aは、事実確認を優先する姿勢は良いものの、「役員会までに証拠が揃わなければ何もしない」という手遅れのリスクを内包しています。また、選択肢Cは、疑惑の当事者に直接接触することで、証拠隠滅や告発者への報復といった二次被害を誘発する可能性が非常に高く、最も危険な選択です。選択肢Bは、月曜日の役員会というタイムリミットに対し、承認プロセスを一旦停止させるという最も効果的な手を打つための準備行動と言えます。
- 内部告発者の保護: 「社として正式に調査する」というメッセージを告発者に伝えることは、彼の心理的な安全を確保し、孤独感を和らげる上で極めて重要です。これにより、告発者がさらなる不利益を被ることを防ぎ、組織の自浄作用への信頼を繋ぎ止めることができます。
重要度:高 / 緊急度:高
- 重要度: 高
本件は、単なる部署内のトラブルではなく、企業の根幹を揺るがしかねない重大なコンプライアンス違反(特許侵害)の疑いです。放置した場合、数億円規模の損害賠償請求、事業の差し止め、そして何よりも企業の社会的信用の失墜という致命的なダメージに繋がる可能性があります。経営の根幹に関わる問題であり、重要度は極めて高いと判断すべきです。 - 緊急度: 高
来週月曜日の午前中という、最終承認の役員会が目前に迫っています。一度承認されてしまえば、プロジェクトは既成事実として走り出し、問題を是正することが格段に困難になります。また、内部告発者である鈴木氏が精神的に追い詰められている状況も看過できません。彼の安全確保という観点からも、即時の対応が求められます。したがって、緊急度は疑いなく「高」です。
管理職として、コンプライアンス違反の疑いに直面した際の行動原則は、アセスメント試験における重要な評価ポイントです。
マインドセット
- 1. 組織として動く意識:「自分が解決してやろう」というヒーローイズムは禁物です。あなたの役割は、問題を然るべき部署(法務、コンプライアンス、人事など)に迅速かつ正確に繋ぎ、組織として最適な対応を可能にすることです。決して一人で抱え込まないでください。
- 2. 告発者の保護を最優先に: 内部告発は、多大な勇気を必要とする行為です。告発者が不利益を被ることがないよう、プライバシーの保護と精神的なケアを最優先に考える姿勢が管理職には不可欠です。「相談してくれてありがとう」という感謝の意を伝え、組織としてあなたを守ることを明確に約束しましょう。
- 3. 事実と憶測の切り分け: 告発内容はあくまで「疑惑」の段階です。感情的にならず、まずは客観的な事実(誰が、いつ、どこで、何をしたか)と、告発者の主観や推測を冷静に切り分けて情報を整理するよう努めてください。この冷静な姿勢が、その後の調査をスムーズに進めます。
アセスメントでの加点行動
アセスメントでは、以下の行動が評価されます。
- 報告・連絡・相談の徹底: 特に自分の権限を越える重大案件では、速やかに上長や関連部署を巻き込む判断ができるか。
- リスクの予見: 短期的な人間関係の悪化やプロジェクトの遅延を恐れず、長期的な視点(法的リスク、レピュテーションリスク)で物事を判断し、より大きな損害を回避する選択ができるか。
- プロセスの重視: その場しのぎの対応ではなく、会社の規定やコンプライアンス・ホットラインなど、定められた手続きに則って行動しようとする意識があるか。

