あなたは、ITソリューション企業「株式会社ネクストウェーブ・ソリューションズ」の営業2課で、1ヶ月前に課長に昇進したばかりです。前任の課長が急遽、海外拠点へ異動となったための抜擢人事でした。
あなたの課には、将来を嘱望される中堅エースの鈴木拓也さん(30歳)が所属しています。彼は先月、3年がかりで追いかけていた大型クライアント「株式会社グローバルフーズ」との年間5億円規模の契約を受注したばかりで、まさにこれからプロジェクトの実行フェーズが本格化するところです。
【現在の状況】
- 日時: 10月2日(月)午前9時00分
- あなたの予定: 本日午前10時の便で、アジア地域の新規パートナー開拓のため3日間の海外出張へ出発。現在、空港のラウンジで搭乗を待っている。
- 制限時間: 搭乗開始までの4分間で、この案件に対する初期対応を判断し、関係者に指示を出してください。
【社内チャットツール】
差出人: 鈴木 拓也(営業2課)
日時: 20XX年10月2日(月) 8時55分
宛先: あなた
件名: 【ご相談】退職に関するご連絡
課長、朝早くに失礼いたします。
出張直前で大変申し訳ありませんが、急ぎお伝えしたいことがあり、チャットさせていただきました。
実は、一身上の都合により、来月末(11月末)をもって退職させていただきたく考えております。
先日受注したグローバルフーズ様の件もあり、会社や課の皆様には大変ご迷惑をおかけすることは重々承知しております。しかし、自分の中で熟考を重ねた結果の決断となります。
詳細については、出張からお戻りになられてからで結構ですので、別途お時間をいただけますでしょうか。
取り急ぎのご連絡にて失礼いたします。
鈴木 拓也
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
この選択肢は、動揺を抑え、冷静かつ組織的に対応する管理職として最もバランスの取れた行動です。理由は以下の通りです。
- 信頼関係の維持: まず本人の意思を尊重する姿勢を示すことで、「頭ごなしに否定しない上司」という信頼感を醸成できます。これにより、帰国後の面談で本音を引き出しやすくなります。
- 冷静な対話の場の設定: 出張前で時間と情報がない中での拙速な判断を避け、「帰国後にしっかり話を聞く」という約束をすることで、お互いに冷静になる時間を作れます。
- 情報管理と動揺の抑制: 「他言無用」と釘を刺すことで、不確かな情報がチーム内に拡散し、組織の士気が低下するのを防ぎます。これは管理職の重要なリスク管理の一つです。
- 業務継続性の確保: 退職を前提とした引き継ぎ指示ではなく、「念のため」という形で現状資料の整理を依頼することで、本人の心情に配慮しつつ、事業継続に向けた最低限のリスクヘッジを行っています。
- 上長への報告義務: 重要な組織課題について、一人で抱え込まずに速やかに上長へ事実を報告(報連相)している点も、組織人として不可欠な行動です。
一方、選択肢Aは感情的で、本人にプレッシャーをかけるだけの悪手です。退職決意を固めた相手に「困る」と伝えても翻意する可能性は低く、むしろ反発を招き関係を悪化させます。選択肢Cは、本人の心情を完全に無視した業務優先の対応であり、あまりに冷淡です。このような対応をされると、本人のモチベーションは著しく低下し、円満な引き継ぎへの協力が得られなくなるリスクが非常に高まります。
重要度:高 / 緊急度:高
この案件は「重要度:高」「緊急度:高」に位置づけられます。
- 重要度(高): エース社員の退職は、単なる人員減以上のインパクトを持ちます。
1. 事業への影響: 進行中の大型案件が頓挫するリスクがあります。
2. 組織への影響: 他の社員の士気低下や、連鎖退職を誘発する可能性があります。
3. 将来への影響: 将来の幹部候補を失うことは、組織にとって長期的な損失です。 - 緊急度(高): 今すぐ電話で慰留すべき、という意味の緊急度ではありません。しかし、
1. 初動の重要性: 出張前に初期対応を誤ると、本人の態度が硬化したり、情報が漏れたりするリスクがあります。搭乗までの30分で適切な初期対応(方針決定と関係者への連絡)を完了させる必要があります。
2. 放置リスク: 何も返信せずに出張に出てしまうと、本人を軽視していると受け取られ、信頼関係を完全に損なう可能性があります。
したがって、限られた時間の中で、状況を悪化させないための冷静かつ的確な「初動」が求められる、緊急性の高い重要案件と判断すべきです。
管理職として、部下からの突然の退職申し出は避けて通れない重要な局面です。アセスメント試験では、以下の観点からあなたの対応が評価されます。
- 感情のコントロール: 驚きや落胆といった個人的な感情を表に出さず、冷静に対応できるか。第一報で感情的になるのは最悪手です。「なぜだ!」「今辞められたら困る!」といった言葉は禁句です。
- 傾聴と受容の姿勢: まずは「話してくれてありがとう」と感謝を伝え、相手の意思決定を受け止める姿勢を示すことが重要です。慰留するにせよ、退職を受け入れるにせよ、スタートは相手の言い分を真摯に聞く「傾聴」から始まります。
- 組織的視点でのリスク管理: 個人的な関係性だけでなく、組織への影響(担当業務、チームの士気、情報管理)を即座に想定し、影響を最小化するための手を打てるか。一人で抱え込まず、上長や人事に適切に報告・相談する「報連相」の意識も問われます。
- 事業継続性の確保: チームの動揺を抑えつつも、最悪の事態(即時退職や引き継ぎの非協力)を想定し、事業を止めないための布石を打てるか。ただし、あからさまな引き継ぎ指示は相手の心情を害するため、タイミングと伝え方には細心の注意が必要です。
結論として、アセスメントで評価されるのは「慰留の成功」ではなく、「突然の事態に対して、管理職として冷静に、かつ組織的な視点で、適切にプロセスをマネジメントできるか」という点です。

