あなたは、大手ITソリューション企業「株式会社フロンティアテック」の営業推進部企画課長です。
今期から、旧「企画部」と旧「マーケティング部」が統合され「営業推進部」が新設されました。あなたの企画課は、この統合により担当業務の幅が大きく広がり、旧企画部の業務に加え、マーケティング戦略立案のサポートや、市場動向分析などの新規業務も担うことになりました。
課内には、エースとして期待されている入社8年目の佐藤 悠(さとう ゆう)さんがいます。彼女は非常に優秀で責任感が強く、新しい業務にも意欲的に取り組んでいますが、その分、業務量が著しく増加しており、残業も増えているようです。最近は、表情に疲れが見え、打ち合わせ中の発言も以前より少なくなっています。
あなたは現在、重要なプロジェクト会議の合間の休憩時間です。手元には、未読メールが数件。会議再開までの残り時間は1時間です。この限られた時間で、これらの情報を処理し、優先順位をつけて対応方針を決定しなければなりません。
差出人: 営業推進部長 山口 悟郎 <yamaguchi.goro@frontiertec.jp>
日時: 20XX年10月28日(月) 10:30
件名: 【要確認】営業推進部内の業務分担と、佐藤さんの状況について
〇〇課長、
お疲れ様です、山口です。
新体制移行後、各課とも業務量が増加していることは承知しています。特に企画課は、新規業務へのキャッチアップもあり、大変な状況だと推察しています。
先日、佐藤さんと少し話をする機会があったのですが、どうも彼女の様子が気になっています。優秀なのは間違いないし、期待も大きいのですが、明らかに業務過多になっている印象を受けました。顔色も冴えず、本来のパフォーマンスを発揮できていないのではないかと懸念しています。
現在進行中の「次世代顧客獲得プロジェクト」では、彼女の市場分析能力が不可欠であり、このままではプロジェクト全体の進行にも影響が出かねません。課長として、彼女の業務状況を把握し、適切な業務分担とサポート体制を早急に検討してください。
来週頭までには、課としての対応方針について報告をお願いします。
よろしくお願いします。
—
山口 悟郎
株式会社フロンティアテック
営業推進部 部長
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベストな選択肢です。
この状況下で管理職に求められるのは、単なる業務の「押し付け」や「丸投げ」ではなく、部下の成長を促しつつ、組織全体の生産性を高める「戦略的デリゲーション」です。
- 部下の状況把握とエンパワーメント: まず、佐藤さん自身の声を聞き、現状の業務負荷、ストレス要因、そして彼女が何に課題を感じているのかを正確に理解することが不可欠です。一方的な業務再分配ではなく、彼女を巻き込むことで、当事者意識とモチベーションを維持・向上させることができます。
- 適切な委譲と育成: ヒアリングを通じて、どの業務が真に彼女でなければならないのか、どの業務を他のメンバーに育成の一環として委譲できるのかを見極めます。委譲先のメンバーの能力も考慮し、単なるタスクの移動ではなく、彼らの成長機会として位置づける視点も重要です。
- 問題の根本解決: 業務負荷の原因が単なる量だけでなく、プロセスやツールの非効率にある可能性も考慮し、共に改善策を検討することで、持続的な解決に繋がります。
- リーダーシップの発揮: 部長からの懸念表明に対し、自らの権限内で主体的に課題解決に取り組む姿勢を示すことで、管理職としての信頼を高めます。必要に応じて、部内での調整後、部長に報告・相談するという段階を踏むのが適切です。
選択肢Aの課題:
- 佐藤さんの意見を聞かずに一方的に業務を振り分けることで、彼女のモチベーションを低下させる可能性があります。また、若手社員への十分な説明や指導なしに業務を渡すと、品質の低下や若手社員の負担増につながるリスクがあります。一時的な解決策にしかならず、根本的な問題解決にはなりません。
選択肢Cの課題:
- 自らの責任範囲内で解決できる問題に対して、すぐに上長に支援を求めるのは、管理職としての主体性や問題解決能力の欠如と見なされる可能性があります。まずは課内でできる限りの対応を検討し、その上で必要な場合に具体的な支援要請を行うべきです。行動が遅れるリスクもあります。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度: 高
- エース社員のパフォーマンス低下と離職リスクは、課全体の生産性に直接影響します。
- 「次世代顧客獲得プロジェクト」の成功は、部の重要目標であり、佐藤さんの貢献は不可欠です。
- 部長からの直接の懸念表明であり、管理職としての対応が評価の対象となります。
緊急度: 高
- 佐藤さんの疲労が蓄積しており、早急な対策が必要です。放置すれば心身の不調や、プロジェクトの遅延に繋がる恐れがあります。
- 部長から「来週頭まで」の報告を求められており、時間的制約があります。
この案件は、部下の心身の健康、組織目標達成、そして自身のマネジメント評価という複数の側面から、「重要度:高、緊急度:高」のマトリクスに位置づけられます。迅速かつ慎重な対応が求められます。
組織改編や新規事業立ち上げ時など、環境変化が大きい状況下では、管理職には特に以下の点が求められます。
- 部下の「声」に耳を傾ける姿勢: 業務量やストレスレベルは、本人にしか分からない部分が多いため、定期的な1on1やカジュアルな対話を通じて、部下の状況をきめ細かく把握することが重要です。一方的な決めつけや指示は避け、傾聴と共感をベースに信頼関係を築きましょう。
- 戦略的なデリゲーション: 単に業務を「振る」のではなく、「部下の成長」と「組織目標達成」の両方を視野に入れた委譲を心がけます。誰に何を、なぜ委譲するのかを明確にし、必要な情報共有、権限移譲、そしてフィードバックを行うことで、部下の主体性を引き出し、育成に繋げます。
- 権限内の最大活用と責任: 上長への報告・相談は適切ですが、まずは自身の課内、自身の権限で何ができるかを最大限に検討し、実行する責任があります。問題を早期に察知し、自ら解決に向けて動き出すリーダーシップが評価されます。
- 部門横断的な視点: 課内だけでなく、部門全体や他部署との連携も視野に入れ、必要に応じて協力を仰ぐ視点も持ちましょう。ただし、それは自部署での努力の限界を越えた場合、あるいはより大きな効果が見込める場合に限ります。
インバスケット試験では、このような複合的な視点から、「組織目標達成」「部下育成」「リスク管理」「主体性」といった管理職としての基本原則に基づいた判断が求められます。

