あなたは、大手総合素材メーカー「アース・マテリアルズ株式会社」の経営企画本部・事業戦略推進課の課長に就任して3ヶ月目です。
現在、あなたは社長直轄の最重要特命プロジェクト「プロジェクト・オリジン(全社基幹システムの刷新とデータ統合基盤の構築)」の推進責任者を務めています。
しかしこのプロジェクトは、会社の二大収益部門である高機能化学品事業部と先端エレクトロニクス事業部の深刻な対立により、計画が大幅に遅延し、暗礁に乗り上げています。
あなたは先週1週間、海外の先進技術視察のため出張していました。フライトトラブルに見舞われ、本日月曜日の午前9時にようやく出社したところです。
あなたの机には「至急」と書かれたメモと共に、部下からのメールが出力されたものが置かれていました。
【あなたの状況】
- 役職:経営企画本部 事業戦略推進課 課長
- 現在の時刻:月曜日 午前9時00分
- 本日の重要予定:午前10時00分から、社長・役員が出席する「プロジェクト・オリジン」の月次進捗報告会議
- 制限時間:5分(午前10時の会議開始までに、この問題に対する方針を決定し、社長への報告内容を固める必要があります)
未読メールの本文
差出人: 佐藤 健太(あなたの部下、事業戦略推進課)
日時: 先週金曜日 18:30
件名: 【緊急・要判断】プロジェクト・オリジンに関する両事業部の最終通告について
〇〇課長
お疲れ様です。佐藤です。
海外出張中、大変申し上げにくいのですが、緊急事態が発生しましたのでご報告いたします。
「プロジェクト・オリジン」のシステム仕様を巡る高機能化学品事業部(鈴木事業部長)と先端エレクトロニクス事業部(高橋事業部長)の対立が、本日、決定的なものとなりました。
本日夕方、両事業部長から私宛に、それぞれ以下の内容のメールが「最終通告」として送付されてきました。
【高機能化学品事業部・鈴木事業部長からの通告(要約)】
- 「現行の計画は、我々の事業の根幹である生産管理システムの安定性を著しく軽視している。現場の膨大なノウハウが詰まった既存システムを捨て、実績のない新技術へ移行するのは自殺行為だ。」
- 「これ以上の議論は無意味と判断。現行のシステム刷新案の完全白紙撤回を求める。これが受け入れられない場合、我々はプロジェクトから一切のリソース(人員・予算)を引き上げる。」
【先端エレクトロニクス事業部・高橋事業部長からの通告(要約)】
- 「グローバル市場での競争は秒単位で動いている。顧客データや開発サイクルをリアルタイムで連携できない現行システムは致命的だ。化学品事業部の保守的な姿勢は、全社の成長機会を奪う『サイロの癌』だ。」
- 「これ以上、1ヶ月でも導入が遅れることは許容できない。当初の計画通り、来月中に新システムへの移行を強行することを要求する。これが不可能なら、我々は独自に外部ベンダーと契約し、事業部単独でシステムを構築する。」
両者ともに一歩も引かない構えで、現場担当者レベルでは完全にお手上げ状態です。私が間に入ろうとしましたが、もはや事業部長間の問題となっており、埒が明きません。
月曜朝10時からの社長報告にて、課長からの方針提示が求められるはずです。
このままではプロジェクトの空中分解は避けられません。至急、ご判断をお願いいたします。
佐藤 健太
回答と解説を見る
正解:B
選択肢Bがベストです。
選択肢Bがベスト
この問題の本質は、単なるシステム仕様の対立ではなく、事業戦略の方向性(安定維持 vs. 革新加速)を巡る経営レベルのコンフリクトです。一介の課長の権限でどちらか一方に軍配を上げることは、極めて危険であり、越権行為です。
【なぜBが優れているのか】
- 視座の高さと役割認識: この問題が自身の裁量範囲を完全に超えていることを正確に認識しています。拙速な自己判断(AやB)を避け、より上位の意思決定機関(社長、役員)に判断を委ねるという、組織人として正しいプロセスを踏んでいます。
- 問題解決プロセスのデザイン力: ただ問題を上に丸投げ(エスカレーション)するのではなく、「緊急トップ会談の開催」と「自身のファシリテーター役」を申し出ることで、解決に向けた具体的な次のアクションを提案しています。これは、問題解決への高い当事者意識とリーダーシップを示す行動です。
- 客観性と中立性: 社長報告において、どちらかの肩を持つことなく、事実を客観的に報告する姿勢は、全社最適の視点を持つ管理職として不可欠です。これにより、経営層からの信頼を獲得できます。
選択肢AやBは、短期的にどちらかの事業部の歓心を買うかもしれませんが、もう一方の事業部との間に決定的な亀裂を生み、プロジェクトを失敗に導くだけでなく、組織全体に長期的な遺恨を残す最悪の選択と言えます。
重要度:高 / 緊急度:高
- 重要度:高
- 緊急度:高
この案件は、典型的な「重要かつ緊急」な案件であり、最優先で取り組む必要があります。
【理由】
- 重要度(高): 社長の特命プロジェクトであり、会社のDX戦略、ひいては将来の競争力を左右する根幹的な問題です。二大収益部門の対立は、放置すれば経営危機に直結するレベルの重要課題です。
- 緊急度(高): 1時間後の社長報告で方針を示す必要があり、両事業部からは「最終通告」という形で最後通牒が突きつけられています。対応の遅れは、プロジェクトの即時崩壊を意味します。
ただし、この案件の処理で最も重要なのは、「緊急性が高いからといって、安易な判断を下さない」ことです。問題の重要性と根深さを冷静に見極め、最も効果的で、かつ自分の権限に沿った次の一手を打つ冷静さが試されています。
部署間の深刻な利害対立は、管理職が直面する最も困難な課題の一つです。アセスメント試験では、以下の原則に沿った行動が高く評価されます。
- 全社最適の視点を忘れない
各部署の主張には、それぞれの立場での「正義」があります。どちらが正しいか、という二元論に陥らず、「会社全体にとっての最適解は何か?」という一段高い視座で常に考えることが重要です。自分の部署の利益さえも相対化して見る冷静さが求められます。 - 「解決」ではなく「解決の場」をデザインする
自分の権限を超える問題(特に役員や事業部長クラスの対立)を、自分一人で解決しようとしないでください。あなたの役割は、対立する当事者たちが冷静に話し合い、より上位の意思決定者が適切な判断を下せるような「場」と「プロセス」をデザインし、ファシリテートすることです。 - エスカレーションを恐れない(ただし丸投げはNG)
手に負えない問題を正直に上司や経営層に報告(エスカレーション)することは、無能の証明ではなく、むしろリスク管理能力の高さを示します。ただし、その際には「問題が起きました、助けてください」という丸投げではなく、「このような問題が発生しており、リスクは〇〇です。解決策として△△を提案しますが、ご判断いただけますでしょうか?」という形で、事実・リスク・代替案・自分の意見をセットで報告することが鉄則です。 - 中立性と誠実さ
対立の仲裁役を務める際は、徹底して中立的な立場を貫き、双方の意見に真摯に耳を傾ける姿勢が不可欠です。どちらか一方に偏った言動は、信頼を失い、問題をさらにこじらせる原因となります。

