あなたは、ITソリューション企業「ネクストビジョン・ホールディングス」のクラウド事業本部に所属する新任課長です。本日付で「第一ソリューション開発部」の課長に着任しました。あなたの部署は、主力クラウドサービス『Connect-Cloud』の既存機能の安定運用と保守開発を担っています。
しかし、前任の課長が急な体調不良で長期休職に入ったため、あなたは十分な引き継ぎを受けられていません。今日は着任初日。まずは溜まっているメールの処理から始めることにしました。
【制限時間】
4分で10件の案件を処理する、という想定の中の1案件です。
差出人: 佐藤 健司 (部下 / 第一ソリューション開発部 リーダー)
日時: 20XX年10月26日 09:15
件名: 【至急】第二開発部からの強引なリソース要求の件
鈴木課長
着任早々、大変申し訳ありません。第一ソリューション開発部の佐藤です。
至急ご相談したい件があり、メールいたしました。
先ほど、第二ソリューション開発部の高橋課長が私のところへ来て、新機能『AIアナライザー』の開発本格化に伴い、我々が管理している検証環境用サーバーリソースの70%を、明日から彼らの部署に引き渡すよう一方的に要求してきました。
ご存知の通り、現在のリソースは既存顧客向けの次期アップデート(Ver 5.2)の品質検証でフル稼働しており、70%も引き渡せば、検証スケジュールに致命的な遅延が発生し、最悪の場合、顧客へ約束した納期を守れなくなります。
その旨を高橋課長に伝えたのですが、「AIアナライザーは田中本部長も期待している最重要プロジェクトだ。全社最適の観点から協力するのが当然。そちらの細かな事情は知らない」と取り合ってもらえません。
現場のメンバーも動揺しています。前任の山田課長が入院される直前にも、同様の件でかなり揉めていたと聞いています。
大変恐縮ですが、本日午前中にでも、課長から今後の対応方針をご指示いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
回答と解説を見る
正解:C
選択肢Cがベストです。
選択肢Cがベスト
この選択肢が最も管理職として成熟した対応です。理由は以下の通りです。
- 事実ベースの判断: まず部下からの報告(感情や主観を含む)を鵜呑みにせず、客観的なデータ(事実)を収集する姿勢は、ロジカルな問題解決の第一歩です。感情的な対立に事実で向き合うことで、議論が建設的になります。
- 当事者意識と主体性: 上司に判断を丸投げする(B)のではなく、まずは自分自身で問題解決を図ろうとする主体的な姿勢を示せています。これはリーダーシップの重要な要素です。
- 対立ではなく協調の姿勢: 一方的に抗議する(A)のではなく、「建設的な協議」を申し入れることで、相手を尊重し、部署間対立を悪化させずに解決しようという姿勢を示せます。「全社最適」という相手のロジックに対し、こちらも「顧客への影響」という別の重要なロジックとデータを準備することで、より高いレベルでの議論が可能になります。
着任初日で情報が少ない中、独断で行動を起こすのは危険です。まずは冷静に情報を集め、交渉のテーブルに着く準備を整えるCの行動が、最もリスクが低く、かつ長期的な信頼関係の構築に繋がります。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高
緊急度:高
この案件は、典型的な「重要かつ緊急」な案件です。
- 重要度(高)の理由: 放置すれば、①既存顧客へのサービス提供に支障をきたし、会社の信頼を損なう、②部署間の対立が深刻化し、組織全体の生産性を低下させる、という二つの大きな経営リスクに直結するため、重要度は非常に高いと判断されます。
- 緊急度(高)の理由: 相手が「明日から」という期限を切っており、部下が混乱し業務が停滞する可能性があるため、即座に何らかの初動(アクション)を起こす必要があります。ただし、「すぐに最終結論を出す」必要はなく、「すぐに対応に着手する」ことが求められる緊急性です。
したがって、他の案件を後回しにしてでも、本日午前中には方針を決定し、行動を開始すべき案件と言えます。
管理職として部署間の対立・利害調整に直面した際は、以下のマインドセットと行動原則が評価のポイントとなります。
- 1. まずは冷静に事実確認: 伝聞や感情的な報告に流されず、客観的なデータや事実(ファクト)を収集・整理することを最優先します。「あなたの部署の主張の根拠となるデータは何か?」を常に自問自答してください。
- 2. 対立の構造を理解する: なぜ相手はそう主張するのか?相手の部署が背負っているミッションやKPI、立場を理解しようと努めることが重要です。「敵」ではなく、同じ会社で異なる目標を持つ「パートナー」と捉える視点が、解決の糸口になります。
- 3. 共通のゴールを探す: 部署ごとの個別最適ではなく、「会社全体にとっての最適解は何か(全社最適)」という一段高い視点に立って議論することを心がけます。「顧客への価値提供」「会社の持続的成長」といった共通のゴールを提示し、そこから逆算して落としどころを探る姿勢が求められます。
- 4. 解決策の選択肢を複数用意する: 0か100かの議論に陥らず、「リソースを30%だけ貸し出す代わりに、こちらの検証作業の一部を手伝ってもらう」といったような、お互いが少しずつ譲歩できる代替案(Win-WinまたはLose-Loseの案)を複数用意し、交渉に臨むことが賢明です。
- 5. 上司の使いどころを見極める: 安易に判断を丸投げするのはNGですが、部署間の調整がどうしても困難な場合や、経営判断が必要な場合は、適切なタイミングで上司に「相談(自分の意見を持った上で)」し、権限委譲や仲裁を依頼することも重要なスキルです。

