あなたは、大手総合商社「グロービス商事株式会社」の営業第一部・課長に昨日付で着任したばかりです。
本日は着任2日目。前任者からの引継ぎは最低限で、まだ部署のメンバーや業務の全体像を完全に把握できていません。
これから5分間、急な来客対応のため席を外さなければなりません。その間に、未処理のメールを1件だけ確認し、次にとるべき行動を判断してください。
あなたの直属の上司である佐藤営業本部長は、本日まで海外出張で不在です。
差出人: 経理部 審査グループ <keiri-shinsa@globis-corp.co.jp>
日時: 本日 09:15
件名: 【ご確認】営業第一部・田中誠様の経費申請について
営業第一部 課長様
経理部審査グループです。いつもお世話になっております。
早速で恐縮ですが、貴部署の田中誠様が申請された先月分の経費について、いくつか確認させて頂きたい事項がございます。
具体的には、取引先である「株式会社ネクスト・イノベーション」様との会食費として、3ヶ月連続で上限に近い金額(約50万円/月)が計上されております。
領収書の形式上は問題ないものの、同社との取引規模や過去の実績と比較して、やや突出している印象を受けます。また、添付された報告書の記述も「情報交換および関係構築のため」と定型的なものが続いております。
社内規定に抵触すると断定するものではございませんが、念のため、事実関係および当該経費の妥当性について、課長様のほうでご確認いただけますでしょうか。
ご多忙のところ恐れ入りますが、来週中を目途にご見解をお聞かせください。
以上、よろしくお願い申し上げます。
回答と解説を見る
正解:A
選択肢Aがベストです。
選択肢Aがベスト
不正疑惑という極めてデリケートな案件において、管理職の初動は極めて重要です。感情や憶測で動くのではなく、客観的な事実に基づいて慎重に行動する姿勢が求められます。
- 理由1: 事実ベースでの判断(Fact Finding)
管理職の初動として最も重要なのは、客観的な事実に基づいて状況を把握することです。経理部からのメールはあくまで「懸念」であり、不正と断定されたわけではありません。この段階で本人に直接問いただす(選択肢B)のは、相手をいたずらに刺激し、防御的にさせ、真実から遠ざかるリスクが非常に高い行動です。まずは客観的なデータを収集し、疑惑の確度を自身で冷静に分析することが先決です。 - 理由2: 影響範囲のコントロール
この種の問題は、初期段階で関係者を広げすぎると、噂が広まり組織に無用な混乱を招きます。上司への報告は必要ですが、まずは課長である自身が一次情報を集約・分析し、自身の見解を持った上で報告するのが筋です。いきなり指示を仰いだり(選択肢C)、他の部下に探りを入れたりする行為は、管理能力の欠如や、チーム内の不信感醸成に繋がりかねません。 - 理由3: 部下との信頼関係の維持
特に新任課長という立場では、部下との信頼関係構築が最優先課題の一つです。エース社員である田中をいきなり査問するような行動は、他の部下にも「新しい上司は我々を信用していない」という強いメッセージを与え、チーム全体のパフォーマンスを著しく低下させる危険性があります。慎重な裏付け調査は、対象者本人およびチーム全体への配慮ある行動と言えます。
重要度:高 / 緊急度:中
重要度:高 / 緊急度:中
- 重要度(高)の理由:
コンプライアンス違反の可能性があり、放置すれば企業の信用問題に発展しかねない重大な案件です。また、エース社員の処遇に関わる問題であり、部署の業績や組織の士気に直結します。管理職としてのリスク管理能力、コンプライアンス意識が厳しく問われるため、重要度は「高」と判断します。 - 緊急度(中)の理由:
経理部からの回答期限は「来週中」であり、即時対応を求められているわけではありません。現時点ではあくまで「疑惑」の段階であり、焦って誤った初動をとるリスクの方が、数日間の対応遅れのリスクを上回ります。冷静な情報収集と対応計画を立てる時間的猶予があるため、緊急度は「高」ではなく「中」となります。
管理職として不正疑惑のような案件に直面した際の、評価されやすい行動原則は以下の通りです。
- 1. 初動は「情報収集」と「冷静な分析」に徹する
不正疑惑の報に接した際、感情的に反応したり、犯人捜しのような行動に走ったりするのは最悪の対応です。まずは「何が事実で、何が憶測か」を切り分けるため、客観的なデータや情報を静かに収集することから始めましょう。今回のケースでは、経理部に協力依頼し、過去のデータと比較分析する姿勢が評価されます。 - 2. 一人で抱え込まず、然るべき相手に、然るべきタイミングで相談する
管理職は孤独ですが、一人ですべてを解決する必要はありません。ただし、相談相手とタイミングは慎重に選ぶ必要があります。まずは事実関係を整理し、自身の見解を持った上で、直属の上司や人事・法務といった専門部署に相談するのが定石です。部下に安易に情報を漏らすのは厳禁です。 - 3. 「人」ではなく「事」に向き合う
疑惑の対象がエース社員であろうと、そうでなかろうと、対応の原則は変わりません。「誰が」やったかではなく、「何が」起きたのかという「事象」そのものに焦点を当てて対応することが、公平性と組織の規律を保つ上で不可欠です。私情を挟まず、あくまで組織のルールと常識に則って判断・行動する姿勢が、管理職には強く求められます。

