あなたは、大手食品メーカー「フューチャーダイニング社」営業本部 営業二課の課長です。課長に就任して3ヶ月が経ちました。前任者は長年課長を務めたベテランで、チーム内には古くからの慣習が根強く残っている状態です。
あなたの課の売上は、在籍20年のベテランエース社員である鈴木一郎さんの個人実績に半分以上を依存しています。彼の存在なくして、課の目標達成は困難と言っても過言ではありません。
【本日のあなたの状況】
- これから最重要クライアントとの終日の打ち合わせのため、外出します。
- オフィスに戻るのは18時以降になる予定です。
- 業務の指示は、基本的にメールで行う必要があります。
- 制限時間内に、以下のメールへの初期対応を判断し、関係者に指示を出してください。
制限時間:5分
差出人: 高橋 美咲 (営業二課)
日時: 20XX年10月27日 09:05
件名: 【ご相談】鈴木さんの経費申請について
佐藤課長
おはようございます。
朝から大変恐縮ですが、少々気になることがあり、ご相談させていただけますでしょうか。
実は、チームのエースである鈴木さんの経費申請について、少し疑問に思う点があります。
鈴木さんが担当されている大手取引先「プレミアフーズ社」との会食費が、経費精算システム上で散見されるのですが、その多くが社内規定である「一人当たり1万円」の上限を頻繁に超過しているようなのです。
また、添付されている領収書の但し書きが「お品代として」となっているものが多く、参加人数や単価がわかる明細が添付されていないケースがほとんどです。
先日、経費処理のことで私が少しだけ鈴木さんにお尋ねしたところ、「これは昔からのやり方で、結果を出すためには必要な投資だ。細かいことを気にするな」と、少し強い口調で言われてしまいました。
チーム内では、鈴木さんとプレミアフーズ社の担当者の方がプライベートでも非常に親密な関係であるという噂もあり、今回の件と何か関係があるのではないかと、少し不安に感じています。
私の考えすぎであれば良いのですが、もしこれが問題であれば、課や会社に迷惑がかかるのではないかと心配です。
お忙しいところ申し訳ありませんが、課長はどのようにお考えになりますでしょうか。ご確認いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
高橋 美咲
回答と解説を見る
正解:A
選択肢Aがベストです。
選択肢Aがベスト
コンプライアンス違反の「疑い」に関する案件、特にエース社員が絡むような複雑な問題においては、管理職が一人で抱え込まず、速やかに上司や専門部署に報告・相談し、組織として対応することが鉄則です。
【なぜAが優れているのか】
- 組織対応の原則: コンプライアンス事案は、個人の判断で誤った対応をすると、問題がより深刻化するリスクがあります(隠蔽の疑い、不適切な聞き取りによる人権侵害など)。直ちに上司に報告し、組織としての判断を仰ぐAの行動は、最もリスク管理に長けています。
- 責任と権限の明確化: 課長としての責任は「問題を速やかに然るべき部署へ報告すること」です。調査の実施や最終的な処分は、より上位の役職者やコンプライアンス部門、人事部門が権限を持って行います。Cはその分担を正しく理解した行動です。
- 通報者の保護: 迅速に「組織として対応する」という姿勢を示すことで、通報者である高橋さんの不安を和らげ、保護する意思を明確に伝えることができます。これにより、健全な内部通報制度の維持にも繋がります。
【他の選択肢の問題点】
- 選択肢C: 事実確認は重要ですが、部下である高橋さんに「秘密裏の調査」を指示するのは、彼女に過度なリスクと精神的負担を負わせる行為であり、マネジメントとして不適切です。また、経理部の同期に非公式に依頼するのも、情報漏洩のリスクがあり正式な手順を踏んでいません。
- 選択肢B: 真っ先に本人に接触する行為は、証拠隠滅や口裏合わせの時間を与えるリスクが極めて高いです。また、高圧的な態度を取られたり、はぐらかされたりして、問題がうやむやになる可能性もあります。事実確認が不十分な段階での直接対話は避けるべきです。
重要度:高 / 緊急度:高
この案件は「重要度:高」「緊急度:高」に位置づけられます。
- 重要度(高):
コンプライアンス違反は、発覚すれば企業の社会的信用を大きく損なう重大なリスクです。特に、長年にわたる慣習的な不正は、組織の規律そのものを崩壊させる可能性があります。また、チームの売上の大部分を担うエース社員が関与しているため、彼の処遇によっては事業への影響も甚大であり、慎重かつ毅然とした対応が求められます。 - 緊急度(高):
部下から正式な内部通報(相談)があった以上、マネージャーは直ちに初期対応を開始する義務があります。対応が遅れれば、通報した社員が不安になったり、不利益を被ったりするリスクが高まります。また、時間が経つほど情報が外部に漏れたり、関係者間で口裏合わせが行われたりする可能性も増大するため、迅速な報告と対応着手が不可欠です。
管理職として、部下からコンプライアンス違反の疑いに関する報告を受けた際には、以下のマインドセットと行動原則を徹底することが、自身と会社、そして部下を守ることに繋がります。
- 冷静さと客観性の維持(Do not Panic)
報告を受けた際、驚きや焦りから感情的な判断をしてはいけません。まずは報告内容を冷静に受け止め、「噂」や「憶測」ではなく「事実(Fact)」は何かを整理する姿勢が重要です。決して個人的な感情や、対象者との人間関係に流されてはいけません。 - 一人で抱え込まない(Report & Escalate)
コンプライアンス事案における最大のリスクは、問題を自分のところで抱え込み、内密に処理しようとすることです。それは「隠蔽」と見なされる可能性すらあります。必ず速やかに上司や、定められたコンプライアンス担当部署・人事部門に報告・相談してください。これが、あなた自身を守る最大の防御策となります。 - 関係者の保護(Protect Whistleblowers)
勇気を出して報告してくれた通報者が、不利益な扱いを受けないように最大限配慮することは管理職の責務です。「報告してくれてありがとう」「組織としてしっかり対応する」というメッセージを明確に伝え、安心させてあげてください。同時に、被疑者に対しても、疑惑の段階で「犯人扱い」することは厳禁です。客観的な事実が確定するまでは、人権に配慮した慎重な対応が求められます。 - 記録の徹底(Document Everything)
「いつ、誰から、どのような報告を受け」「それに対して、自分がどう判断し、いつ、誰に報告したか」を時系列で正確に記録しておくことが極めて重要です。後の調査や報告の際に、あなたの行動の正当性を証明する客観的な証拠となります。
アセスメント試験では、これらの原則に基づき、いかにリスクを管理し、組織人として適切なプロセスを踏めるかが厳しく評価されます。

