あなたは、SaaS企業「株式会社ネクスト・イノベーションズ」のソリューション営業部 第2課の課長に就任したばかりです。
本日は、半年前から準備を進めてきた最重要パートナー企業との提携交渉のため、3日間の海外出張に出発する日です。あなたは現在、空港に向かうタクシーの中におり、フライトまであと2時間です。搭乗手続きなどを考えると、スマートフォンで業務対応できる時間は実質1時間しかありません。
PCは使えず、部下や関係者への指示はメールか短時間の電話のみ可能です。出張中は緊急時以外の連絡は受けられないことになっています。これから、出社してから未読にしていたメールを確認し、必要な対応を行います。
差出人: 山田 健司 <k-yamada@next-innovations.co.jp>
宛先: 田中 誠(あなた) <m-tanaka@next-innovations.co.jp>
CC: 鈴木 一郎(営業本部長) <i-suzuki@next-innovations.co.jp>; 高橋 聡(技術統括本部長) <s-takahashi@next-innovations.co.jp>
日時: 20XX年10月27日 09:15
件名: 【至急・要確認】グローバル・マニュファクチャリング様案件の追加開発要件について
田中課長
製品開発部の山田です。表題の件、昨日、貴課の佐藤さんから連携された要件定義書を確認しました。
結論から申し上げますが、記載されている「AI需要予測のリアルタイム精度向上モジュール」の追加開発は、到底受け入れられません。
理由は以下の通りです。
- 技術的実現性: 要求されている精度を現在のアーキテクチャで担保するには、基幹部分の改修が必要となり、少なくとも6ヶ月の開発期間と専門エンジニア3名が必要です。
- リソースの欠如: ご存知の通り、開発部は次期メジャーアップデート(Ver3.0)の開発で全リソースを投入しています。本件に対応できる人員は一人もいません。
- プロセス違反: このような大規模な追加開発は、必ず企画段階で我々開発部と技術的な実現可能性を協議するのがルールのはずです。営業が顧客に安請け合いし、事後報告で開発に丸投げするやり方は断じて認められません。
鈴木本部長にもCCで入れさせて頂いておりますが、このままでは開発現場の士気に関わります。本日15時に、関係者で緊急会議を設定させてください。貴課の責任ある立場として、必ずご出席をお願いします。
差出人: 鈴木 一郎 <i-suzuki@next-innovations.co.jp>
宛先: 田中 誠(あなた) <m-tanaka@next-innovations.co.jp>
CC: 山田 健司(製品開発部長)
日時: 20XX年10月27日 09:30
件名: Re: 【至急・要確認】グローバル・マニュファクチャリング様案件の追加開発要件について
田中課長
山田部長からのメールは見た。言い分は分かるが、この案件は今期の売上目標達成の鍵を握る最重要案件だ。受注額3億円、絶対に落とすことは許されない。
顧客は、この追加機能こそが他社ではなく我々の製品を選ぶ決め手だと明言している。今更「できません」では済まないのは分かるな?
君のミッションは、『何としてでも』開発部を説得し、この案件をクローズさせることだ。開発のリソースがないなら、他部署から借りてくるくらいの気概を見せろ。今日の会議、私は別件で出られないが、君が営業の代表としてしっかり落とし前をつけてくれることを期待している。出張前の大変な時だとは思うが、これも管理職の仕事だ。頼んだぞ。
回答と解説を見る
正解:C
選択肢Cがベストです。
選択肢Cがベスト
この状況で管理職に求められるのは、感情的な対立を鎮静化させ、関係者間の対話を促し、組織全体の最適解を見出すためのリーダーシップです。選択肢Cは、そのための最も効果的でバランスの取れた初動と言えます。
評価のポイント:
- 1. 当事者意識と責任感: 重要な海外出張という自身の責務を果たしつつも、Web会議で参加する意思を示すことで、問題を放置しないという当事者意識と責任感を示しています。これにより、営業と開発の双方から「逃げた」と思われることを防ぎます。
- 2. 公平性と情報収集: 一方の意見(営業本部長の圧力)に流されることなく、まずは両部署の言い分を公平に聞く場を設定し、客観的な情報収集を優先する姿勢は、問題解決の基本です。対立を煽るのではなく、ファシリテーターとしての役割を果たそうとしています。
- 3. 組織的視点: 短期的な売上(営業の主張)と、中長期的な開発リソースや組織のルール(開発の主張)の双方を尊重する姿勢が伺えます。これは、自部署の利益だけでなく、会社全体の利益を考える視点を持っている証拠です。
他の選択肢の課題:
- 選択肢B: 営業本部長の圧力に屈し、対立をさらに煽る最悪の選択です。根本的な問題解決から目を背け、部署間の溝を深めるだけで、長期的には組織に深刻なダメージを与えます。部下に責任を丸投げする形になり、リーダーシップの欠如と判断されます。
- 選択肢A: 一見、責任感が強く見えますが、より大局的な視点が欠けています。最重要パートナーとの提携交渉という自身の重要なミッションを放棄しており、計画性の欠如や場当たり的な対応と評価されます。また、自分がいないと何も進まないという考えは、部下への権限移譲や組織的な問題解決能力を育成する機会を失うことにも繋がります。
重要度:高 / 緊急度:高
重要度:高、緊急度:高
この案件は、典型的な「重要かつ緊急」なタスクであり、最優先で対応すべき問題です。
- 重要度(高)の理由:
- 事業インパクト: 受注額3億円の大型案件の成否に直結しており、会社の業績に与える影響が非常に大きい。
- 組織インパクト: 営業と開発という主要部門間の深刻な対立であり、放置すれば組織全体の生産性低下や信頼関係の毀損に繋がる。組織マネジメント上の重要課題です。
- 顧客信頼度: 顧客との約束を反故にする可能性があり、企業の信頼を大きく損なうリスクをはらんでいます。
- 緊急度(高)の理由:
- 時間的制約: 本日15時に緊急会議が設定されようとしており、即時の対応が求められています。
- 機会損失リスク: 顧客との関係が悪化する前に、迅速な初動対応(状況説明や代替案の検討など)を開始しないと、失注に直結する可能性が高いです。
- 問題拡大リスク: 対立が感情的なものにエスカレートする前に、管理職として早期に介入し、冷静な議論の場を設定する必要があります。
部署間の利害対立は、どの組織でも起こりうる普遍的な課題です。アセスメント試験では、このような状況であなたがどう振る舞うかを通じて、管理職としての成熟度が見られています。
- 「ゼロサムゲーム」ではなく「共通のゴール」を目指す
営業「が」勝つか、開発「が」勝つか、という発想に陥ってはいけません。管理職の役割は、「会社として、顧客に対してどうすれば最大の価値を提供できるか」という共通のゴールに全員の目線を向かせることです。犯人探しや責任のなすりつけ合いを止めさせ、建設的な議論を促すファシリテーション能力が問われます。 - 感情ではなく「事実(ファクト)」で語る場を作る
対立時は感情的な言葉が飛び交いがちです。「いつもそうだ」「勝手なことをするな」といった非難の応酬からは何も生まれません。管理職として、「顧客が本当に求めている価値は何か?」「技術的な代替案は存在しないのか?」「リソースを捻出する方法は本当にないのか?」といった具体的な事実やデータに基づいた議論に導くことが重要です。 - 自部署の代弁者ではなく「組織の調整役」であれ
営業課長だからといって、営業の言い分を100%代弁するだけでは不十分です。開発部の事情や制約にも真摯に耳を傾け、理解を示す姿勢が信頼関係を築きます。時には自部署のメンバーを諌め、相手部署の立場を説明する「翻訳者」としての役割も求められます。会社全体の最適解を追求する視点が、高い評価に繋がります。

